病気のため、長期入院すると寝ている時間が長くなります。
私の場合、抗がん剤が必要な病気でしたので、点滴のチューブが身体の自由を妨げるし、寝返りもできません。が、自分でも感心するくらい、よく眠ります。長時間は寝れませんが、短時間の睡眠を繰り返します。入院は「退屈でやることがない」という人もいますが、深刻な病気の場合は、本当によく眠れます。
目をつむり睡眠に入る間に思考が回ります。これがどういうわけか、悪い記憶ばかり再生される。それも些細な事ばかり。
宿題をやってなくて怒られ、クラスで吊るし上げられた出来事。
塾で勉強ができなくて、何時間も居残りをさせられて、母が心配して迎えに来ていた出来事。
好きになった女の子から、陰口を言われている光景。などなど……..
恥ずかしい記憶が次から次へと再生されます。社会人より学生時代の出来事ばかり。どちらかというと社会人になってからのほうが、辛いことが多かったのに。
楽しい出来事を再生できるように、意識的に思考しますが、やはり睡眠にはいると悪い記憶が再生される。嫌な記憶かな。そんな事、思い出さなくてもいいのに、という記憶です。
私の病気は難治性のT細胞リンパ腫。口の周りにも癌ができてしまい、会話が困難になり、コミュケーションがうまく取れませんでした。看護師さんたちばかりですが、「無口で我慢強い患者さん」と受け止められていたようです。上手に話すことができたら、少し違ったのかもしれません。
「なるようになれ」と覚悟は決めていたつもりですが、これからの治療に対しの不安などは、完全には払拭できないものなかも。今までの人生を振り返り、悔改めよ。ということなのか?
挑戦もしてこなかったし、諦めることも多かったのは確かかもしれない。治療がうまくいき、時間をもらえるならば、生き方を変えることはできるかもしれないけど、尽きたら後悔のまま消えるのか?生まれ変わったら、しっかりやりなさい、ということか?それも切ないな。
頭痛の影響なんでしょうか?抗がん剤の影響で白血球が減少し、輸血をするようになります。そのときに鈍い頭痛を感じます。ヘモグロビンの影響と説明されましたが、よくわかりません。「眠れない」と言ったら、精神科の先生が来てくれて、睡眠導入剤を少量、処方してくれました。さすがに眠りが深くなり、記憶も再生されなかったです。
過去の悪い記憶がフラッシュバックして、苦しんだりするような深刻なものではないのですが、できれば楽しい、幸せな記憶を再生できたら、と思いますよね。病気で苦しい状況では、それは叶わないのかも知れません。何よりも抗がん剤が効いていないので、苦しい状況でないんです。
抗がん剤ですから「だるさ、倦怠感」だけが体を包みこみます。白血球が下がった状態でも体感は、なんにも感じません。感染症にかかると一発で終わるようですが。
死の間際には誰もが「走馬灯のように記憶が蘇る」ということよく聞きますが、それは見送る側のファンタジーのようです。人生のフラッシュバックは、かなり前段階に訪れると聞きます。そして田舎の親戚や学生時代の友人に会いたくなると。私も死期が迫っているのか?うつの前触れなのか?よくわからない。
精神科の先生が、「本やテレビを見るより、ゲームをすると紛れる効果が高い」と言っていた。スマホの中に入っている簡単なゲームでもいいと。一時的に現実逃避ができて「無」になることができるらしい。長時間はよくないが、少しならいいよ。と。
記憶に関する資料をググってもよくわかりません。
記憶のカギを握る「海馬」
脳が物事を記憶していく上で、それが本人にとって「楽しかったのか」「悲しかったのか」という区別は全くありません。 本人にとって「その記憶が鮮烈だったのか」「ぼやけたものだったのか」という基準で記憶していきます。
あえて言えば「楽しかった記憶」の方が、思い出した時に幸せな気分になれますから『記憶の棚の中でも思い出しやすい引き出しに入っている』という表現が正しいです。 楽しい記憶に満ち溢れている人でも「悪夢」を見たり「嫌な思い出」の夢を見たりします。
誰でも「楽しい」「悲しい」の両方の記憶を均等に持っているのです。楽しかった思い出よりも悲しかった思い出の方が、あなたにとってはるかに鮮烈で強烈で、「思い出しやすい引き出し」も悲しい思い出が多く格納されているのでしょう。
非現実的な科学医療で記憶を消し去ることは理論的には可能です。 脳の中心部にある「海馬」という組織を焼き切れば、過去の記憶はなくなります。 ただ、この場合学習能力が極端に低下し、うつ症状、短期記憶能力の欠如(1時間前の事を忘れる)などの弊害が出てくると思われます。現実的にはムリです。
楽しい思い出だけを思い出す。 これも記憶というもの自体が本人の意思に関わらず行われている事ですので、脳は睡眠中に必要・不必要な記憶を取捨選択して長期記憶領域に格納します。 性格のポジティブトレーニングをやったところで、脳の記憶までは変えられません。
数多くある脳の部位の中で、特に記憶に関係しているのが海馬である。短期記憶は海馬と前頭連合野が担い、長期記憶は海馬が中心となって担う。
海馬から送られてきた記憶の情報は、電気信号として大脳皮質の神経細胞を刺激する。その刺激が強くなるほど多くのシナプスが組み合わせされて伝達効率が増し、特定の電気信号が通りやすい特別な回路ができる。その回路が長時間にわたって持続することで、記憶が保たれる。記憶を引き出すときは、その記憶の回路に電気信号が流れて思い出す。
海馬の機能が注目を集めたのは、1950年代以降である。1953年、重度の癲癇(てんかん)を患っていたヘンリー・グスタフ・マレイソンが、治療のために海馬領域のほとんどを摘出する手術を受けた。手術の終了後、手術を受ける前の出来事やそれまでに得た知識は覚えていたものの、新しいことを記憶することができなくなっていた。もっとも、運転技術のように身体で覚えることに関しては学習することができた。
このことから、海馬は長期記憶そのものを司る器官ではなく、長期記憶を形成する前段階に必要な器官であることが分かった。
海馬は多くの記憶を整理し、覚えるべきものとそうでないものを区別し、覚えるべきものと判断した記憶を大脳皮質に送る。こうして送られた情報が、長期記憶となると考えられている。海馬のその他の特徴としては、「年齢を重ねても神経細胞が増える」「ストレスに弱い」などが挙げられる。
海馬は快や不快の感情を作り出す扁桃体とのつながりが強く、ストレスによって海馬の神経細胞は増える力を抑制されてしまう。PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症すると、海馬が小さくなることが分かっている。PTSDと健常者がそれぞれ文章を読み、その直後と一定時間が経過した後で内容を思い出す実験をすると、PTSDの被験者はいずれのケースにおいても結果は乏しかった。
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