「バーナード・マドフ事件」詐欺の帝王 獄死

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2008年12月に発覚した「バーナード・マドフ事件」、アメリカ史上最大級の詐欺事件として今なお語り継がれている。というのも含み損ベースで650億ドル(約7兆円)にのぼる被害額の大きさもさることながら、犯人がNASDAQ株式市場の非常勤会長であり、スピルバーグなど国内外の著名人や世界中の金融機関(日本の大手金融機関も)を顧客に持つ「金融界の帝王」と呼ばれた超大物だった。

大規模なポンジ・スキームに関連した犯罪で有罪判決を受けて連邦刑務所に服役した詐欺師である。一時はNASDAQ株式市場の非常勤会長を務めていたが、その後、世界史上最大のポンジ・スキームと米国史上最大の金融詐欺の運営者であることが明らかになり、後に告白した。検察は、2008年11月30日時点でマドフの4,800人の顧客の口座にあった金額を基に、この詐欺は648億ドルの価値があると推定している。

マドフは1960年にペニー証券会社を設立し、それがやがてバーナード・L・マドフ・インベストメント・セキュリティーズに発展した。2008年12月11日に逮捕されるまで、同社の会長を務めた。同社は、リテールブローカーからの店頭での注文を直接執行することで、「専門業者」を回避する、ウォール街でもトップレベルのマーケットメーカー事業を展開していた。

兄のピーター・マドフを専務取締役兼最高コンプライアンス責任者として、ピーターの娘のシャナ・マドフを同社の規則・コンプライアンス責任者兼弁護士として、そして今は亡き息子のマークとアンドリューを雇用していた。

2008年12月10日、マドフの息子たちは当局に対し、父が自分の会社の資産運用部門が大規模なポンジ・スキームだったことを告白し、「一つの大きな嘘」だったと語ったことを引用した。身辺整理し自首すると告白するも、翌日に息子たちによって通報を受けたFBIにより逮捕された。

取り調べにおいて単独犯であると主張するが、何も知らずに指示に従っていた弟のピーターも逮捕される。

翌日、FBI捜査官はマドフを逮捕し、証券詐欺の1件の罪で起訴した。米国証券取引委員会(SEC)は、それまでにも彼のビジネス手法について複数の調査を行っていたが、大規模な詐欺行為は発覚していなかった。2009年3月12日、マドフは11の連邦重罪を認め、自身の資産管理事業を大規模なポンジ・スキームに仕立て上げたことを認めた。

著名投資家からの投資資金はまさにネズミ講式に増えていった。

証券取引委員会による調査の結果、マドフが自ら運営する投資ファンドについて、「(運用によって)10%を上回る高利回り」などと虚偽の内容をうたい、投資家たちから多額の資金を集めたという事実が明らかになった。

マドフ受刑者は年率10%の利回りを着実に出すとの触れ込みの投資ファンドを運用し、口コミで国内外の投資家から資金を集めていた。もっとも運用の中身は投資家から集めた元本を取り崩しながら毎年の配当に充てるという自転車操業だった。しかし、「マドフ氏のファンドはもうかる」という噂が広がり、新規の資金が流入して運用資産残高は増えていった。

マドフによる資金運用の詐欺の被害に遭った人々の数は、数百人から数千人に及ぶことが明らかになった。アメリカン・フットボールのフィラデルフィア・イーグルス元オーナーのノルマン・ブラマン、ニューヨーク・メッツのオーナーフレッド・ウィルポン、ゼネラル・モータース(GM)の金融サービス部門GMACの会長であるエズラ・マーキン、さらには映画監督のスティーヴン・スピルバーグ、俳優のケヴィン・ベーコンといったセレブリティも被害にあっている。

プロの金融機関も騙されている。ロイヤルバンク・オブ・スコットランド、BNPパリバ(フランス)、サンタンデール(スペイン)、日本の野村證券などの大手金融機関が被害にあっている。あおぞら銀行、住友生命保険、三井住友生命、明治安田生命、あいおい生命保険、太陽生命保険、日本興亜損保、富国生命保険なども資金をあずけて被害にあったという。

マドフはユダヤ人社会で一目置かれている存在だったため、ユダヤ人コミュニティーの信用の輪の中で広がってしまい、ユダヤ人の慈善団体や学校などもマドフに資金を預けてかなりの額の損害を被った。ナスダックの会長や米証券業協会(NASD)の会長まで上り詰めた人物が運用するファンドなだけに、ユダヤ人コミュニティーや知り合いの口添えを通じてしか投資できないという特権階級意識も手伝ったされる。

バレたのは、リーマンショック

リーマン・ショック後に金融機関や投資家のファンド解約が急増すると、マドフ・ファンドは解約金の支払いができなくなり、破綻。「史上最大の詐欺師」とその被害者も、金融危機の影響を受ける。

マドフ・ファンド運用の違法性を早くから見抜いた会計専門家のハリー・マルコポロス氏は何度も米証券取引委員会(SEC)に告発していた。が、SECはそれを無視して被害が拡大したともいわれ、SECの歴史に汚点を残しす。その後SECが違法行為の告発者への対応を重視するルールを導入するなど、マドフ事件は規制当局へも影響を及ぼした。

マドフは、1990年代初頭にねずみ講を始めたと述べているが、連邦捜査当局は、詐欺行為は早くて1980年代半ば、遡って1970年代には始まっていたのではないかと考えている。消失した資金の回収を担当している者は、この投資事業は決して合法的なものではなかったかもしれないと考えている。

顧客の口座から消えた金額は、捏造された利益を含めて650億ドル近くに上った。証券投資家保護機構(SIPC)の管財人は、投資家の実際の損失額を180億ドルと見積もっている。2009年6月29日、マドフは最高刑である150年の禁固刑を宣告された。マドフは刑期中の2021年4月に死亡した。ノースカロライナ州バトナーの連邦医療センターにて死去。死因は自然死であった。82歳でした。

兄ピーターは懲役10年の判決を受け、2010年12月11日早朝、ニューヨークの自宅アパートで長男のマークが首を吊って死んでいるのを弁護士のマーチン・ロンドンが発見した。ロンドンはマークの2番目の妻ステファニーの義父で、生前のマークからメールを受け取ったフロリダ滞在中のステファニーに代わって訪問し、遺体を見つけた。この日は父親の逮捕から丸2年であった。

2014年には次男のアンドリューが悪性リンパ腫により48歳で死亡した。兄弟とも大学卒業後、父親の会社で働き、兄は二人の妻との間に4児、弟は離婚した妻との間に2児があった。兄弟が詐欺を知ったのは逮捕間近の父親からの告白であり、それまで知らなかったとしている。兄弟の元妻らはマドフの親族らとともに被害者団体から金銭の返還を求める訴訟を起こされている。

米司法省任命の管財人が投資家の損失回収にあたり、これまでに約32億ドルが投資家に返還された。

判決が確定し13年の収監生活でしたが、刑務所生活は過酷だったようです。2009年12月には、マドフ受刑者が他の受刑者から殴られ鼻の骨や肋骨を折られるという事件が起きたといいます。殴った男性はかつてマドフに投資したことがあり、損害を被っていたとされ、柔道の黒帯を持つボディービルダーで薬物犯罪で服役中だったという。

映像化もされています。映画とドキュメンタリーの3作品。

ワーナー・ブラザースの配信会社HBOで制作、日本での配信は、U-NEXTです。U-NEXTはちょっと高額な配信サービスですので、ちょっとためらいますが、もう少しでワーナー・ブラザースのHBOが直接配信をする可能性が強いと思われます。Netflix、Disney+並の料金で提供されるかもしれませんね。

『ウィザード・オブ・ライズ 嘘の天才 ~史上最大の金融詐欺~』(2018年)

大規模なネズミ講(正確には「ポンジ・スキーム」という)で、投資家や金融機関から巨額の資金をだまし取ったバーナード・メドフの逮捕後を描いた作品。元ニューヨーク・タイムズの記者ダイアナ・ヘンリケスのノンフィクション小説を基に映像化した。希代な詐欺師の表と裏の顔をロバート・デ・ニーロが怪演しています。

映画の中では、「自分は悪くない」と主張つづけます。自分は悪くないとばかりの言い訳ばかりを口にする。原題:THE WIZARD of LIES/邦題:ウィザード・オブ・ライズ 嘘の天才~史上最大の金融詐欺~2017年・アメリカ(2時間13分)

『バーナード・マドフ: ウォール街の詐欺師』(2022年)

(原題 MADOFF The Monster of Wall Street) – 2022年にネットフリックスで公開されたドキュメンタリー番組。全4話。

『証言で綴る歴史的事件の真相「史上最大の金融詐欺事件」』

2020年にナショナルジオグラフィックで放送されたドキュメンタリー番組。全3話。

 

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