「ゲティ家の身代金」という作品があります。リドリースコット監督。すごく面白かったです。
ストーリーは、実話をもとにしています。石油王にして世界一の大富豪の孫が誘拐されます。
身代金を求める電話がかかってくるものの、類まれなるケチな大富豪はなんと支払いを拒否します。
息子を取り戻したい孫の母親で富豪の義理の娘は様々な方策を巡らせるのだが、解決の糸口すら見いだせないままどんどんと追い詰められていく……。
リドリースコット作品らしく、テンポがよく美しい映像です。何よりも役者がいいですね。
本来、ケビン・スペイシーが演じることになっていました。撮影が取り終えていたんですが、14歳の男子にセクハラ事件が表面化して、大問題となります。代役を立てて取り直すことになるんですが、それが名優クリストファー・プラマーです。9日間で取り直している。ケビン・スペイシー版も見てみたいですが、おそらく超えてはいないでしょう。誘拐犯が耳を削ぎ落とすシーンがかなり残酷です。
ジャン・ポール・ゲティ(Jean Paul Getty)は実在の人物で有名です。
父親が手掛けていたオクラホマにある石油採掘事業から学び、ゲティ・オイルを起業します。世界有数の巨大企業に上り詰めます。てっきりユダヤ系と思っていたんですが、真逆で対立関係にあったようです。1932年にドイツ・ナチス政権が誕生すると、高官たちと親密な関係を築き、オーストリア併合時に、ユダヤ系のロスチャイルド家の資産を狙いに行きます。1941年にアメリカがナチス・ドイツとの戦いが始まると、FBIの監視下におかれました。
戦争が終わるとイギリスに移住する。1948年にはサウジアラビア、イラン、クウェートで権利を獲得し油田を開発する。1950年には石油やホテルビジネスなど関連会社で40社(最終的200社)を保有し1956年、フォーチュン誌で世界一の大富豪に選ばれる。1966年にはギネスブックに「世界一裕福な個人」に認定されます。中東ビジネスに必要なアラビア語を操れたという。
御多分に漏れず好色です、46歳までに5回結婚。子供ができると、旅行に出かけ、会うことを拒否する。多数の愛人の存在しました。
映画にも描かれていますが、極度な倹約家です。
自宅に訪れた客の電話代を払いたくなくて、公衆電話を設置します。調べるときりがないのですが、異常なケチです。誘拐のされた孫の身代金を値切り、支払った身代金を節税に利用したりします。
世界有数の美術品収集家です。巨大な美術館を建設しますが、完成が死の2年前だったため訪れることはありませんでした。すでに病気を患っていたと思われます。死後、資産は美術館を管理するゲティ財団に託されます。金持ちは美術品収集をしますが、資産管理の目的が主なんでしょうね。
のちに帝国のメインだったゲッティ・オイルは、テキサコに身売りしています。このときも揉めています。当初、ペンゾイルに交渉をしていたのですが、後から高い額を提示したテキサコに約束を保護して身売りします。ペンゾイルは契約を反故にされたことで、大規模な法廷闘争となり、テキサコはチャプター11(日本でいう民事再生法)を余儀なくされます。
現在、存在しているのは、カリフォルニア州ロスアンジェルスにある「ポール・ゲティ美術館」です。年間1300万人が訪れる、アメリカ屈指の人気美術館です。
ゲティ・コレクションをもとに1954年に創設されました。1974年には古代ローマの遺跡ヴィラ・ディ・パピリを模したギャラリーが開設され、現在では「ゲティ・ヴィラ」という名称で古代ギリシア・ローマ、エルトリアの古代美術品に触れられる場となっています。一方で、1997年にはリチャード・マイヤーの設計による複合文化施設「ゲティ・センター」が新たにオープンし、中世から近現代までの西洋美術をアメリカでも有数のコレクションによって辿ることができます。また、19世紀から1960年代までの膨大な写真コレクションも有名で、タルボットやナダール、スティーグリッツなどの充実したコレクションを誇っています。現代美術作家ロバート・アーウィンによって設計された庭園は、憩いの場として来館者に親しまれています。
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