セブン&アイ DX失敗。相変わらずの社内政治

社会考察

消費者のことを考えずに、いろいろ複雑なことをしてきたツケが回ってきた印象です。ヨーカドーやセブンイレブンでスマホを提示して、セブンマイルを貯めるサービスなんてことをしていましたが、まったく消費者には意味がなく、よくわからないうちに終了。

この会社は、じつに日本的で、どろどろとした陰湿な内部・派閥抗争が繰り広げられていると言われています。カリスマ経営者として「小売の神様」とまで呼ばれた鈴木敏文、創業家伊藤家の代替わりもあり、2016年、自らが発議した井阪隆一社長更迭案が取締役会で否決されたことを受けて、辞任に追い込まれました。創業家と確執が表面化した鈴木氏に対しての、井阪氏が造反した更迭劇と言われます。

DX化の大失敗。独自のQRコード決済の崩壊

キャッシュレス化に関しては完全に後れを取るレベルではなく、もはや終わっています。独自の電子マネー「ナナコ」もヨーカドー利用者以外には、メリットがなく、コンビニ・セブンイレブンではPayPayなどの横断的なサービスが圧倒的です。

「オムニ7」まったく成果を出せず終了。

リアル店舗とECサイトの垣根を取り払い、双方のメリットを活かしたユーザー体験を提供する、小売店のマーケティング手法【オムニチャネル】のポータルサイトとして、2015年にスタートしたECモール。

グループ内の店舗を問わず、リアルとネットの融合を図って作られたオムニ7は、売上目標1兆円を目指していましたが、サービス開始直後からその売上は低迷し続けました。

その後、数度に渡るリニューアルを行うものの、結果的にECサイトとしては十分な成果を上げることができず、2023年にサービスを終了することがアナウンスされています。

「セブンペイ」の破綻

スマートフォン決済サービス・セブンペイは、「スマホを通じて顧客や購買情報などのビッグデータを幅広く収集」する事を目的に、2018年7月にでスタートしました。しかし、開始直後に不正アクセスが発覚。総額3,800万円という莫大な被害を出すという事態を招き、わずか3ヶ月でサービスは終了しました。

セブンペイ失敗の大きな理由は、「2段階認証」を怠ったセキュリティ管理の甘さと、セブンアプリにログインするための7iDからの移行がスムーズにいかず、顧客からの問い合わせが殺到し、店頭の従業員がその対応に追われたことが原因とされます。

7iDはセブン&アイで導入されている会員システムであり、会員総数約1650万人です。セブンペイの当初は7iDのアカウントを用いて、セブンペイの登録ができるとされていましたが、直後から「のっとり」による被害が続出。この被害額でよく済んだと思います。大企業ですが、下手すれば壊滅的な状態になりかねませんでした。

2021年秋、セブン&アイのDX部門トップを務めグループのDX戦略を統括していた米谷修氏が、グループを去りました。

これを受けてセブン&アイでは、2020年4月に発足したDX戦略本部を解体し、1,200億円を投じて推し進められていたDX戦略の撤回を発表したのです。ちなみに、1,200億円というDX投資は、流通業界におけるDX投資比率(売上に対するIT投資額)としては、他社の2倍を超える水準とされています。

それだけ巨額な経費を投じて行われていた戦略を白紙撤回するという事は、事実上、セブン&アイの「DX戦略の崩壊」を意味しています。

DX化とは?ようはシステム変更です。新しいオペレーションを導入するわけですから、適切に対応できなければ、現場は大混乱します。特にセブンイレブンなどでは外国人労働者が当たり前な現場、お客はスマホもろくに使いこなせない老人が多数。たまったものじゃありません。

一時的に効率が悪化するケースもあります。その結果、DXを推進したにもかかわらず、導入直後は売上が下がってしまう場合も多々あるはず。

新システムに対応するためには一定の時間が必要なことを理解せず、売上ノルマなどを最適化しなければ、現場としてはDXが大きな負担となり、フランチャイズのオーナーからは「辞めろ!もとに戻せ!」となってしまいます。

このような事態を避けるためにも、「DX推進とは痛みを伴うもの」だと経営陣が理解し、一時的な売上減少への補填や人事に対する配慮など、適切な現場の従業員への対応が必要です。

DX推進は、時に企業の経営理念やビジネスモデルの変革すら求められる、企業の根幹に関わる重大な事業です。それには、トップや経営陣の覚悟が必要な事は言うに及ばず、現場従業員や外部取引先に至るまで、すべてのステークホルダーによるDXに対するコミットメントと共通の認識が求められます。

しかし、セブン&アイの社長・井阪隆一氏は、自分が詳しいコンビニの経営には興味があるものの、門外漢であるDXには関心が薄いという関係者の声もあるように、DX推進に関しては直接の担当者であるDX戦略トップの米谷氏に丸投げ状態。

「見せしめ人事」とも取れる不可解な人事や、経営陣の派閥争いなどに端を発するDX推進への横槍があったといわれています。トップは創業家が支配し、極めて古い体質の日本的経営組織ですから、責任のなすり合い、足の引っ張り合いが顕著に見られます。

セブン&アイのDX戦略は、自前でシステムを構築・運用する、DXの「内製化」でした。

内製化のために莫大な資金を投じていました。しかし、いくら潤沢な予算があるとはいえ、短期間で全ての業務を内製化できるわけもなく、DX推進のために多くのベンダーを起用することになります。ここ数年は玉石混合の様々なベンダーが、セブン&アイの「DXバブル」から恩恵を得ようと群がっているような状況でした。

その上、米谷氏がDXトップに就任した際、それまでのメインベンダーを変更しようとしたところ、それに対して創業家出身でイトーヨーカ堂取締役常務執行役員の伊藤順朗氏から横槍が入るなど、ベンダー起用1つ取っても社内政治が複雑に絡み合っていました。

日本国内では、社内政治に明け暮れ、混乱で先が見えなくなっていますが、海外M&Aは活発に行っています。2018年に(米中堅コンビニの)スノコLPから1000店規模を買収。これを気に2020年8月に大型M&Aを行っています。

約2兆3000億円を投じて米ガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」を買収。米連邦取引委員会(FTC)から最終的な承認を得るのに時間もかかりましたが、2021年6月に取得の許可が下り、買収にこぎつけています。店舗数は全米3位の3854店舗。

ただこれも、ガソリンスタンド併設型のコンビニです。アメリカも自動車EV化の流れにあがなうことはできません。国内市場が天井になっているため、しばらくは成長の軸となるとは思いますが、どうなるかな?

 

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