ビートパラドックス 鯨や象は癌になりにくい現象

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人の30%はがんで亡くなると言われます。

年令を重ねるほどに、細胞の中の遺伝子が異常を起こし蓄積され、癌を発生させる原因と言われています。遺伝子が壊れ、細胞の異常コピーが引き起こすことが、がんの原因です。

同じ哺乳類でありながら、人より身体が大きく、人より多数の細胞を持っている象や鯨はがんにかかりにくいと言われます。がんで亡くなる象は3%と言われ、人に比べ低い死因です。

生物の大きさとがんになる確率が一致しない現象は「ピートのパラドックス」と呼びます。1977年、統計学者、疫学者であるリチャード・ピートはこの点を指摘し、この問題は「ピートのパラドックス」と名付けられました。細胞ががん化する確率が同じだとすると、身体が大きい生物ほど細胞数が多く、がんになる確率が高くなるはずだが、実際には、がんになる確率はほぼ等しいという逆説。

大型生物が、がんを抑制する機能と遺伝子が備わっているが、中程度のサイズの生物がそうした遺伝子を相対的にあまり持っていないのは、その遺伝子がもたらすがんの抑止力という長所が、別の短所(多産能力の減退)によって打ち消されるためかもしれないというもの。

人であっても鯨や象であっても生物の細胞サイズには大きな違いがありません。巨大なシロナガスクジラと小さなネズミを比べると、鯨のほうが多くの細胞を持っています。がんは細胞のコピーエラーですから、細胞が多い大型動物のほうが高い確率でがんになるはずです。

しかし、実際は違います。がんになる確率は変わりません。この矛盾は「ピートのパラドックス」現在はっきりとした答えは見つかっていません。

人の体内では細胞が絶えずコピーをしています。何億回とコピーを繰り返すわけですから、通常でもエラーが発生し、がん細胞が生まれています。しかし、問題が起こると免疫細胞が機能し対処します。

この免疫細胞が機能しなくなると、がん細胞が体内で広まってしまい取り返しの付かないことになってしまいます。

がんを防ぐには、細胞のエラーを最小限にして、免疫細胞が対処できる範囲に留めおくこと。もしくは免疫細胞をさらに強化して、エラーを見過ごさないように最強レベルに引き上げるしかありません。

細胞のエラーが原因なら対処できそうな話ですが、現実は難しいようです。

人の3000倍の細胞を持ち、100年以上の寿命がある巨大なシロナガスクジラは、ほとんどがんにならないと言われます。以前は人と同じように大型動物も高齢化すると細胞エラーによりがんに侵されると思われていましが、予想より遥かに少ない確率とわかってきました。

完全にはわかっていませんが、仮説として大型動物は多くの腫瘍抑制遺伝子を持っています。

象は人間の20倍もの腫瘍抑制遺伝子を持っています。エラーした細胞は自殺、自滅する遺伝子です。他の哺乳類にも腫瘍抑制遺伝子はありますが、人は1個しかありません。象は20個あると2015年の研究でわかります。

象のゲノム解析で、がん抑制因子をコードするp53(別名TP53)遺伝子のコピーが20個もあることわかります。p53は、細胞がDNA損傷を受けると活性化してp53タンパク質を量産する。このタンパク質は転写因子として機能し、DNA損傷部分を修復する一連の遺伝子を誘導して修復を助け、また損傷が激しい場合には、その細胞死を誘導する遺伝子を活性化して異常な細胞を消し去る。

カルロ C. メイリー 米アリゾナ癌および進化センター所長 象にがん抑制遺伝子p53が20個あることを発見。

米ユタ大学の小児腫瘍医で科学者のシフマン博士が、p53が「ピートのパラドックス」に関わっているという着想を得てから論文発表し注目をされる。

彼はp53の2つの対立遺伝子のうち1つがなく、この状態ではがんにつながる子どもの治療を専門に行っている。カルロ C. メイリーの話を聞いて、自分の患者を助けるのに役立ちそうな生物学上の手掛かりをゾウから得られるのではないかと考えた。

そこでシフマン博士は、まだ研究結果を発表していなかったカルロ C. メイリーとチームを組み、ソルトレークシティーの動物園のゾウ飼育係に、p53タンパク質が哺乳類の白血球でどう働いているのかを調べるために血液を分けてくれるよう頼んだ。

「細胞エラーの見逃し」はがん発生に繋がるので、この遺伝子を多く持っている大型動物は、細胞の数が多くても見逃しが少なくなり、がんになりづらい。このメカニズムが人に応用できるのであれば、画期的ながん予防となる可能性がある。

クジラも細胞の増殖を促進するがん遺伝子の働きが抑えられていますが、がん抑制遺伝子が活性化しており、遺伝子の異常を修復する能力も高いと考えられています。

がん細胞は変異したものですから、変異を加速させていきます。その過程でがん細胞を事態を攻撃、殺す細胞が生まれるのではないか?「ハイパー細胞」と呼ばれていますが、これがいまいちわかっていません。

細胞分裂スピードの違いも影響があるとされています。

2014年に発表されたセバスチャン・マシアック氏による論文では、細胞の分裂速度に焦点が当てられています。論文によると、細胞サイズが大きいとその分細胞分裂が遅くなり、結果としてがん細胞が発生する確率も低下すると。大型動物は一般的に基礎代謝率が低く、ゆっくりと細胞を分裂させる。

これら細胞分裂速度に関する要素が組み合わさることで、細胞の数が多くとも発がん率を低下させることができるというのです。

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