アメリカのテレビ局の人気キャスターが相次いで降板しています。CNNは女性差別発言が問題視されたためですが、FOXの方はちょっと複雑です。
皮肉をいう文化なのでちょっとミスをしたり、時代を風潮を捉えていないと致命傷になります。CNNのキャスター、ドン・レモンは、共和党から2024年大統領選に立候補したヘンリー元国連大使(51歳)を揶揄する流れで、
50代は女性の全盛期を過ぎていると。「残念だが彼女は全盛期にない」「女性の全盛期は20〜30代、せいぜい40代までだと考えられている」と続けた。
直後に共演する女性キャスターがたしなめたが、レモンは「事実を言っているだけだ。グーグルで検索してみて」などと持論を曲げなかった。
2月のことで、謹慎期間を経て番組に復帰しましたが、批判は収まらなかった。視聴率は低下し、ゲストが出演を拒否するなどアレルギーが起こっていた。
CNNはリベラル左派寄りのメディアで、共和党には辛口。ドン・レモンもトランプ大統領を「人種差別主義者」と呼ぶなど、トランプを巡る歯に衣を着せない発言でよく知られるようになった。
クリス・リヒト最高経営責任者(CEO)のお気に入りと思われており、彼のリーダーシップの下で新番組「CNNディス・モーニング」の共同司会者となった。発言はこの番組でのもの。
CNNに17年間勤務。2023年4月24日解雇されたが、解雇の兆候がなかったと本人は不満を表している。
偶然にも、同じ日にFOXニュースで高視聴率を誇っていた、タッカー・カールソンの退社が発表された。
大物アンカーの降板、退社は大きな話題を呼びます。
株式市場では、カールソン降板をうけ親会社のFOX Corpの株価は5,6%下落、時価総額7億㌦(1㌦130円換算・940億円)を失う。
FOXはCNNとは真逆の共和党支持メディア。民主党にとっては誰よりも手強い保守派アンカーの退場に喜びを隠せないようです。高齢のバイデン大統領は、職務に専念する「ローズガーデン戦略」を続けてきたが、再出馬を仄めかしている。
FOX Corpの最高責任者は、政界に隠然たる影響力を持つ「メディア王」ルパート・マードック、92歳の高齢だが存在感は衰えない。保守派層メディアの揺らぎを見逃さないあたりは、老兵のバイデンの強かなところかもしれない。
最も稼ぐスターアンカー。司会を務めてきた「タッカー・カールソン・トゥナイト」への出演で、年間1500万〜2000万㌦(約20億〜27億円)を稼いでいたと言われます。
FOXニュースでキャスターになる前の2010年、保守派のニュース・オピニオンサイト「ザ・デイリー・コーラー」を共同で設立し、2020年に共同設立者で大学時代のルームメイトだったニール・パテルに売却している。パテルはディック・チェイニー元副大統領の側近だった人物。活動資金は保守派のフォスター・フライスから資金提供をうけていた。
2009年にFOXにキャスターとして参加し、番組は2017年以来、平日午後8時の放送枠を占めており、平均視聴者数が330万人。ケーブルニュース局の番組としては2番目に多かった。
ドタバタの降板劇だったようで、自身も退社を示唆していなかったし、当日の朝、降板が決定されたといくつかのメディア(CNNなど)が報道している。
オーナーのルパード・マードックが切り捨てた感じですが、一番の原因として挙げられるのが、訴訟問題と言われます。
2020年の米大統領選に関する報道をめぐり、投票機メーカーの米ドミニオン・ボーティング・システムズから名誉毀損で訴えられ、2023年4月末に7億8750万ドル(約1060億円)の支払いで和解。この訴訟で裁判所に提出された文書によると、カールソンを含むFOXのトップキャスターや幹部は、同局が報じていた投票不正の主張を内輪では繰り返し非難していた。
投票機メーカーがトランプを当選させなかったとしつこく言っていたことは事実だが、これはFOXの意向によるもの。それとは別に女性プロデューサーから訴訟も。
元番組プロデューサー・アニー・グロスバーグから、2023年4月、ニューヨークの連邦裁判所に提出した訴状で、「下品な性差別的ステレオタイプに基づき、女性を従属させる職場環境」で労働を強いられたと主張。被告人には、カールソンのほかに、番組幹部が含まれている。
彼の降板で、FOXの平日プライムタイムの視聴数が激減した。
「フォックス・トゥナイト」と番組名を替え、交代制の司会で凌ぐ形になっている。朝の番組「フォックス&フレンド」で共同司会を務めるブライアン・キルミード氏が務めた。降板初日の視聴者数は、ライバルを上回りトップを維持するが、視聴者数が330万人から260万人減、21%低下した。
独裁的な人物がトップに君臨している組織のため、FOXで働く人達を巡るどろどろは、映画「スキャンダル」でよく描かれています。
1986年に、ルパード・マードックがNBCの経営者だったロジャー・エールス(2017年没)をトップにすえ築かれたテレビ局。レーガン大統領の元で規制緩和政策により誕生した「第4の商業放送」だった。
当初はBig3(CBS ABC NBC)に対して劣勢が続いたが、1993年にNFLの放送を巨額で買いつけたこと、およびニクソン政策の元で一時沈滞傾向にあったBig3に対し『ビバリーヒルズ青春白書』や『メルローズ・プレイス』といったドラマがヒットし「Big4」の一角に成長した。
2000年ごろにテレビ離れが起き始めると、「アメリカン・アイドル」など数多くのリアリティ番組を製作し大ヒット。他局も真似ることになる。
映画「スキャンダル」ではロジャー・エールスのセクハラ、パワハラで追放されるまでを、人気キャスターだったメーガン・ケリーなどの視点で描いています。
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