1か月間を禁酒して、体と心をリセットする。イギリスを発信地として、この10年ほどで欧米を中心に広がってきたという。新年の1月にスタートするイベントが盛んになりつつあるようです。
1か月の断酒後は健康的な飲酒習慣が維持できるようになり、血圧やコレステロール値の降下、糖尿病リスクの低下などに効果を発揮する。当然、財布にもやさしい。昨今、日本でも酒は飲めるがあえて飲まない「ソバーキュリアス」が注目されているが、それだけ酒との向き合い方が変わってきたということだろう。
たった1カ月の禁酒で健康状態が劇的に改善し禁酒終了後の飲酒量も減少する
「適度な量の飲酒は体に良い」という言説を耳にすることは多いですが、2022年には「少量の飲酒でも心臓に害を及ぼす」ということが35万人規模の実験によって明らかになっています。そんな飲酒と健康について、「1カ月間禁酒すると、その後も飲酒量が減少し、健康状態が改善する」という研究結果をワシントン・ポストがまとめています。
アメリカやイギリスでは、1月に1カ月間だけ禁酒する「Dry January」と呼ばれる運動が流行しており、毎年何万人もの人々が1カ月間の禁酒に挑戦しています。Dry Januaryはあくまで1カ月間の禁酒に挑戦する運動ですが、多くの挑戦者は1カ月が経過して制限がなくなった後も飲酒量の減少を経験するとのこと。
心理学者のリチャード・デ・ヴィッサー氏が行った「数千人に及ぶDry January挑戦者の8月の飲酒量を測定する」という研究では、挑戦前の平均飲酒頻度が週4.3日で、挑戦から半年以上が経過した8月時点の飲酒頻度は週3.3日にまで減少したことが確認されました。
また、Dry Januaryの挑戦者は1カ月の禁酒によって「お金を節約できる」「体重が減少する」「睡眠が改善される」「集中力が強化される」といった健康状態の改善を経験していたとのこと。デ・ヴィッサー氏は、挑戦者の成功体験がDry January終了後の長期的な飲酒量制限につながっていると指摘しています。
また、1カ月の禁酒によって健康状態が大幅に改善したことを示す研究結果も存在しています。アメリカとイギリスの研究チームは、94人の被験者を「1カ月禁酒するグループ」と「禁酒しないグループ」に分けて健康状態を記録する実験を実施しました。
実験の結果、禁酒したグループは「体重が平均 2kg減少」「血圧が低下」「2型糖尿病のリスク指標であるインスリン抵抗性が大幅に低下」「がん関連の成長因子の大幅な減少」といった健康状態改善が確認されました。さらに、被験者の飲酒状況を実験の6~8カ月後に再調査した結果、禁酒したグループでは飲酒量が大幅に低下していたことも判明しました。
上記のようにDry Januaryなどで1カ月の禁酒に挑戦すると、健康状態の劇的な改善が期待できます。しかし、デ・ヴィッサー氏によるとDry Januaryの挑戦者の約11%は禁酒終了後に飲酒量が増加するリバウンドを経験していたとのこと。ワシントン・ポストは、Dry Januaryの成功率を高めるために以下のアドバイスを提示しています。
・友達と一緒に挑戦する
・アルコールを含まないお気に入りの飲み物を見つける
・飲酒に代わる習慣を身に付ける
・禁酒によって節約できた金額を記録する
また、ワシントン・ポストは「1カ月の禁酒か難しすぎる」という人に対して「平日は飲酒しない」「1日当たりの飲酒量を半分に抑える」といった比較的簡単な目標から取り組むことを提案しています。
Z世代が飲まなくなった? 今やアメリカ人の7人に1人が「1月に断酒」する
1月に「断酒」してお酒との付き合い方を見直すきっかけにする人が増えてきています。世界的にトレンドになりつつある「ドライジャニュアリー」というムーブメント
イギリスのAlcohol Change UKというチャリティー団体が企画したイベントで、1月にお酒を断つことでアルコールとの付き合い方を見直そうというものです。もともとは、あるイギリス人女性が2月のハーフマラソンに参加するために、1月に禁酒してトレーニングに打ち込んだことに端を発します。
この1カ月間の禁酒体験は、本来の目的であるハーフマラソンの完走はもとより、彼女の体に減量、快眠、気力充実などいくつものポジティブな結果をもたらしました。その体験を得た彼女は、お酒との付き合い方に疑問を感じる多くの友人知人の良き相談役になっていったのです。
その後、彼女はAlcohol Change UKに勤め、自身の体験をドライジャニュアリーという企画に落とし込み、2013年からイベントをスタート。
クリスマスや大みそかなど行事が盛りだくさんな12月の翌月で、お酒を控えたいという人が一定数いたこともあり、ドライジャニュアリーは徐々に浸透していきます。
2013年にイギリスにおいて4000人規模でスタートしたキャンペーンは、大西洋を越えてアメリカでも広く市民権を獲得し、今日ではアメリカ人のおよそ7人に1人が参加する巨大イベントに成長しているとも言われています。
海外の「ドライジャニュアリー」成功要因は?
日本と同じように海外でもお酒の消費量が減っていて、反動としてノンアルコールの需要が上がっているのでは?Z世代をはじめとした若年層ではお酒を飲まない人の割合は増えていますが、全体としては横ばい~微増が近年の傾向です。
健康への関心がここ数年、新型コロナウイルスの影響もあって高まったということです。ただ飲む頻度が減ったというだけでなく、若年層を中心にビンジ飲酒暴飲することが減ってきています。
ノンアルコール商材の高品質化。ノンアルコール商品が洗練されてきたということです。これまで、ノンアルコールというとジュースやソーダなど「お子様のドリンク」というイメージが強かったのですが、ここ7~8年のノンアルコール産業の変化によって、そのイメージは覆されました。
今では、コーヒー店でデカフェ(ノンカフェイン)コーヒーを注文するように、当たり前のこととして、レストランやバーでノンアルコールの商品を頼むことができます。
こうした「大人の空間」や「大人の時間」に飲んでも違和感のない商品が数多く出てきたことが、消費者の行動にも変化を与えているようです。
人々のこうしたノンアルコールへの流れが、タイミングよくドライジャニュアリーというイベントと一緒になったことで大きな流れとなったようです。
世界的にアルコールに対して、風当たりが強くなっています。
カナダ当局「適正飲酒量は週にビール2杯」事実上の禁酒令?
カナダの保健当局が「1週間にビール2杯が適切な飲酒基準だ」と勧告した。カナダの薬物使用・依存症対策センター(CCSA)は、「酒の席での適正なアルコール摂取量はアルコール度数5度のビールで355mlの1缶、12度のワイン148mlで1杯、40度の強い酒で1杯だ」と明らかにしたという。
その上で、「こうした酒の席が週2回以下なら健康を害するリスクは低いとみられる」とも伝えたとのことだ。また、「妊娠したり、妊娠を考えたりしている場合は、いくら少ない量でもアルコールは有害である可能性がある」と警告もした。
これは、2011年の勧告と比べると、飲酒回数が大幅に減っている。CCSAは当時「男性は週15回、女性は週10回以内」と言っていた。
「CCSAの勧告に対して現地ではこれを疑うような反応が出ている」と指摘した。カナダの成人の約80%が飲酒をするという英BBC放送は「CCSAの勧告は愛飲家に不愉快な警告になる可能性がある」と報じた。
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