バーバリーがライセンスを解消したときに「もうだめかな?」と株を取引する人なら、多くの人が感じた銘柄です。倒産はないにしても三井主導で再編、合併を予想していました。
バーバリーといえば「おじさんブランド」だったはず。
マフラー等が女子高生などで定番でしたが、アパレルブランドとして知名度を高め、日本人の間で普及させたのは、間違いなく三陽商会の高い手腕によるものです。1997年に歌手の安室奈美恵さんがバーバリーチェックのミニスカートで、ブームになったり、バブル崩壊後の不況の中でも1500億円付近の売り上げを維持してきました。
2009年には赤字に転落、人員削減を行っています。下降傾向の状態のときに、2015年、バーバリーショックが襲います。
高級ブランドの軸足が日本から中国に移る中、ライセンスによる生産を見直す決断をバーバリー英国本社が行います。特に前CEOのアンジェラ・アーレンツ氏は、三陽商会が行っていた若者に訴求し、半値の価格帯のブラックレーベル、ブルーレーベルはお気に召さなかったといいます。
2013年、ライセンスによる売上は3400億円。名前貸しですから、ライセンス料は185億円がバーバリーの懐に。売上規模からすれば僅かなものでした。2010年、スペインにおけるライセンス契約を見直しが成功したことで直営経営に舵を切ったといわれます。
バーバリーの穴埋めをするために、バーバリーと同じ英国ブランド「マッキントッシュ」を手掛けるが、売上を補う事はできず6期連続の赤字となる。
三陽商会の2023年2月期連結業績は、売上高が582億円(会計基準変更前の前期は386億円)、営業損益が22億円の黒字(同10億円の赤字)、純損益が21億円の黒字(同6億6100万円の黒字)だった。本業のもうけを示す営業損益が黒字になるのは7期ぶり。主力事業だった「バーバリー」のライセンス事業を失って以来となる。
コロナによる行動制限がなくなったため、外出着を求めて衣料品の動きが回復した。売上高と営業利益は計画値を上回った。在庫コントロールの徹底と値引き販売の抑制によって粗利益率は2.5ポイント改善した。繰延税金資産を計上したため、純利益は予想から6億円ほど上振れした。
2016年6月末に売上高の約半分を占めてきた「バーバリー」のライセンス事業を契約切れで失った。「バーバリー」を通年展開した最後の年である15年12月期は売上高974億円(当時の会計基準)だったが、16年12月期に676億円(同)、17年12月期は625億円(同)と縮小を余儀なくされた。
当初は3年での営業黒字化を掲げ、不採算ブランドの撤退や人員整理などのリストラとともに、穴埋めのための新ブランドの出店拡大に取り組んだ。しかし実を結ぶことはなく、3人の社長が退場を余儀なくされた。その後、元三井物産の商社マンで、ゴールドウイン再建の実績を持つ大江伸治氏が20年5月に社長に就き、徹底した構造改革を進めてきた。
今期(24年2月期)は、売上高595億円、営業利益24億円、純利益22億円と増収増益を予想している。
創業者の吉原信之が、戦時下の1943年に電気関係各種工業用品及び繊維製品の製造販売を目的として、東京都板橋区にて工作機械工具の修理加工、販売をおこなうべく同社を設立する。社名の由来は「三井」「三菱」など有力財閥の「三」と、創業者である吉原の父、「陽」に因んでつけられた。
1942年に創業していますから、戦争中にできた会社です。戦争後に残っていた軍用落下傘の絹に油を引き、「オイルシルク・レインコート」として販売、サンヨーレインコートとして商標登録します。また、米進駐軍のレインコートを受注、三井物産との関係を深めます。
戦後物資不足の中、女性の間で流行します。レインコート専業メーカーとして発展します。
レインコートメーカーとして順調な歩みますが、梅雨時期と秋口に偏る「季節商品」。売上のバランスが隔たります。創業者・吉原信之は大手百貨店と共同で春コート「ダスターコート」を発売しました。ダスターは埃を払うという意味。明るい白、フロントファスナー、ステンカラー、ラグランの1枚袖という斬新なデザインは、発売と同時に爆発的に売れ、1955年には全国規模での大ブームに。
1970年 バーバリー社とのライセンス契約。2015年にバーバリー社の直営展開の方針によりライセンス契約を終了する。
創業者・吉原信之は『最後の江戸っ子』の異名を持ち、べらんめえ口調で喧嘩っ早く、形式主義への反抗心が強かったが、人一倍の人情家で義侠心の厚い人物だったとされています。
統率力のある創業者のもと、レインコートの成功を足掛かりに総合アパレルメーカーに成長、大手アパレル4社、オンワード、ワールド、TSI(東京スタイルとサンエー合併)の一角の地位を築きます。
他のアパレルと違いは、バーバリーと百貨店に頼りすぎたことでした。ライセンス解消でブランドを失い、百貨店以外の販路がなく、百貨店事態も低迷する中では、衰退は避けることができません。独自のブランドを育てることが苦手の裏返しなのかも知れませんが、品質にはこだわりがあり、定評があるメーカーです。
他のアパレルのように原価率を下げることができない。急激にコストを下げたり、安価な路線に走ると、それまでの顧客の信頼を失い、さらに売上げを下げるスパイラルに陥ることはアパレルではよくある話。世界一の売り上げを誇ったレナウンのように、倒産に追い込まれかねない。
セブンイレブンのように米国本社を逆買収をするケースもありますが、ライセンス商売は、風向きが変わると梯子を外されますし、難しいところです。
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