モンサント社が1970年に開発した除草剤「ラウンドアップ」。農業者だけでなく、家庭菜園の手入れなどにも使われる除草剤ですが、発がん性があると疑われているものでもあります。
世界保健機構(WHO)の専門機関、国際がん研究期間(IARC)は2015年3月、ラウンドアップの主要成分グリホサートは5段階の発がん性分類リストの上から2番目、「発がん性が疑われる」2Aカテゴリーに分類されると報告書を出しました。
損賠訴訟
ラウンドアップの発がん性に対する損賠訴訟がはじめに起きたのは2018年8月。米国で「学校の校庭整備のために使用したラウンドアップが原因で、悪性リンパ腫を発症した」と末期がん患者がモンサント社に損害賠償を求めました。
この裁判では「グリホサートにがんを引き起こす可能性がある」と示されたモンサントの秘密文書が明らかになりました。そのため「モンサント社が、がんの可能性を知りながらも警告しなかった」として損害賠償が認められ、カリフォルニア州サンフランシスコ市は2018年8月10日、モンサント社に2億8,900万ドル(約320億円)の損害賠償金の支払いを命じました。
上記の件を含む3件の訴訟の一審判決で、高額な賠償金の支払いを命じられているモンサント社ですが、「グリホサートはがんを引き起こさないという800を超える科学的研究とレビューがある」と主張し、控訴しています。
モンサント社は、同じような裁判を約5千件抱えているといいます。アメリカとカナダでは、モンサント社の親会社バイエルとともにラウンドアップを販売したホームセンターに対しても、損害賠償を求める訴訟が起きています。
除草剤の発がん性めぐる訴訟で和解 1兆円超
ドイツの化学大手バイエルは24日、同社の除草剤「ラウンドアップ」の影響でがんになったと訴えられた訴訟で、109億ドル(約1兆1600億円)を支払うことで和解したと発表した。
グリフォセートを主成分とするラウンドアップの発がん性をめぐっては、約12万5000件の訴訟が起こされている。
ニューヨークの法律事務所ワイツ・アンド・ラクセンバーグは、原告約10万人を代表して、和解に至ったとしている。バイエルは不正行為はなかったと主張しているが、「不安定な状況」を終わらせるため、支払いをするとした。
ラウンドアップは、2018年にバイエルが買収した米モンサントの商品だった。40年以上前に発売されて以来、世界中で最もよく使われている除草剤となっている。
バイエルがウェブサイトに出した声明によると、96億ドルを訴訟の解決のために支払い、12億5000万ドルを今後の訴訟などに充てることが、和解の条件に含まれているという。訴訟全体の約4分の1は未解決だとしている。
バイエルのヴェルナー・バウマン社長は、「ラウンドアップをめぐる和解は何より、長期の不安定な状況を終わらせる点で、バイエルにとって適切なタイミングでの適切な行動だ」と述べた。また、「ラウンドアップはがんの原因にはならず、この訴訟で主張された病気に責任を負うものではない」とのこれまでの主張を繰り返した。
安全性は未決着
ラウンドアップをめぐっては、米カリフォルニアの裁判所が2018年8月、がんとの関連性を認め、多額の損害賠償の支払いを命じた。
訴訟では、ラウンドアップを使っていた原告たちが、ラウンドアップと有効成分グリフォセートのせいで非ホジキンリンパ腫などのがんになったと主張してきた。
グリフォセートは多くの除草剤で使われているが、安全性については科学的な結論は出ていない。グリフォセートを含む除草剤を禁じる国がある一方、使用を認めている国もある。バイエルはグリフォセートの発がん性を否定している。米環境保護局も、この見解を支持している。
各国、禁止の方向に進んでいる。
2003年にはデンマークがラウンドアップの散布を禁止した。グリホサートが土壌を通り抜けて地下水を汚染していることが明らかになったことによるものだ。カナダでは2012年末までに全州で芝生や庭での使用を禁止した。
2014年にはスウェーデンやノルウェーがラウンドアップの使用を禁止した。オランダ議会は2015年末でグリホサートの使用禁止を決めた。ブラジルでも2015年連邦検察官が司法省にグリホサートを暫定的に使用禁止にするよう求めた。ドイツ、イタリア、オーストリアなど33カ国は2~3年後には禁止すると表明している。
スリランカ政府は2014年、ラウンドアップの販売を禁止し、翌2015年にグリホサートの輸入を禁止した。これはカドミウムとヒ素を含む土壌でラウンドアップを使用した場合、飲料水やコメを通して重い慢性腎不全の原因となるとの研究報告を受けてのことだ。
ロシアも2014年4月、ラウンドアップ耐性遺伝子組み換え食品の輸入を禁止した。アラブ6カ国も使用禁止に踏み切っており、ベトナムなどアジア5カ国やマラウィはグリホサートの輸入禁止を決定している。エルサルバドルやチリ、南アフリカ共和国などもラウンドアップの販売を禁止するか禁止に向けて動いている。
禁止された余剰分が、日本に大量に流入中です。
フランスでも2019年4月、控訴裁判所がモンサントのラウンドアップの一世代前の農薬ラッソーによって農民に神経損傷の被害を与えたとして、モンサントに有罪判決を下した。
ラッソーは1980年代にアメリカでもっとも多く売られていた農薬だったが、危険性が問題になり米国環境保護局が発がん性の可能性を認め、フランスを含むEUでは2007年に禁止した。だがアメリカと日本では使われ続けている。日本では日産化学が「日産ラッソー乳剤」として現在も販売している。
ラウンドアップの危険性への認識は世界的に拡散されており、店頭でラウンドアップが簡単に手に入るのは先進国では日本ぐらいになっている。
世界中からはじき出され行き場を失ったラウンドアップが日本市場に一気になだれ込んできており、除草剤では売上トップの座を占めている。日本では日産化学工業が2002年5月にモンサントの日本での農薬除草剤事業を買収し、ラウンドアップの日本での販売権を引き継ぎ、「優れた効力と環境に優しい除草剤」などと宣伝してきた。
日本政府はすでに世界的に危険性が明確になっていた2016年に「グリホサートの安全性を確認した」との評価書を公表した。
この評価書を前提に2017年12月には、グリホサートの残留農薬基準を大幅に緩和した。小麦で6倍、ソバで150倍、ゴマで200倍、ベニバナの種子で400倍というけた違いの大幅緩和。
このことをマスコミは一切報道しなかった。これによってグリホサートの残留基準は中国の基準の150倍になった。中国からの輸入野菜が農薬まみれで危険だと問題にしていたが、中国産野菜の方がまだましという殺人的な状況になっている。
ラウンドアップの主成分であるグリホサート剤はすでに成分特許が切れており、さまざまな名前で同剤が販売されている。そのなかには住友化学園芸の「草退治」などがある。
ラウンドアップは日本の店頭では「もっとも安全な除草剤」とか「驚異の除草力」とかいった宣伝文句で販売されている。農協の販売ルートにも乗っており、ホームセンターやドラッグストア、100均などでも扱っている。またテレビCMや新聞広告もされ、危険性についての説明は一切なく、警戒心なしに購入し使用しているのが現状だ。
モンサント社が遺伝子組み換え作物を開発したのは、ラウンドアップに耐性のある農作物をつくり、セットで販売するため。ラウンドアップの販売促進は遺伝子組み換え作物導入とセットでもある。日本は世界で最大級の遺伝子組み換え作物輸入国で、日本の遺伝子組み換え食品表示は世界の制度のなかでも緩いため、日本の消費者は知らないうちに大量の遺伝子組み換え食品を食べさせられている。
モンサントのホームページでは「日本は海外から大量のトウモロコシ、大豆など穀物を輸入しており、その数量は合計で年間約3100万㌧に及ぶ。その半分以上(1600万~1700万㌧=日本のコメの生産量の約2倍)は遺伝子組み換え作物」で「日本の食生活安定に大きく貢献している」とし、ラウンドアップとともに「是非、遺伝子組み換え作物の効果やメリットを目で見て、肌で感じて」ほしいと豪語している。
こうしたモンサントの要求に応えて、日本政府はモンサントの遺伝子組み換え作物をアメリカ政府以上に承認していることも明らかになっている。TPP11の発効や今後の日米貿易協定などを通じて、今まで以上に遺伝子組み換え作物輸入の圧力がかかってくることは必至です。
モンサント社(ドイツのバイエル社が買収)はアメリカのミズーリ州に本社を構える多国籍バイオ化学メーカー。除草剤ラウンドアップが主力商品で、遺伝子組み換え種子の世界シェアは90%であり、世界の食料市場をほぼ独占している巨大なグローバル企業。人間の健康および環境の両方に脅威を与えているという理由から健康情報サイトでは2011年の世界最悪の企業にも選ばれている。
ラウンドアップが世界中で禁止され閉め出されるなかで、唯一日本政府がモンサントの救世主となって一手に引き受ける段取りをとり、日本市場になだれをうって持ち込まれている。
世界各地で農民、労働者、市民が毎年5月に展開している「反モンサントデー」が制定されました。市民、農民、消費者団体の有志がよびかけたもの。東京駅のすぐ近くにあるモンサント社日本法人前には、首都圏、北海道や愛知など各地から200人が「除草剤ラウンドアップは販売中止」と訴えました。
私も、訴訟に参加したい。悪性リンパ腫の原因だと思っています。日本政府に訴訟をしたい気分です。
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