「不平等を見過ごせない人は」鬱になりやすい。
経済的格差が小さくなれば、うつ病が減るかもしれない。国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)脳情報通信融合研究センターの研究マネジャー、春野雅彦さんが率いるグループが、不平等とうつ病との間に、脳科学的に見て強い関連があるという仮説を立て研究を進めている。不平等とうつ病の相関はこれまで統計的調査、研究で語られてきたが、脳の活動変化から確認できるという。
精神疾患により医療機関にかかっている患者数は、近年大幅に増加しており、平成23年は320万人と依然300万人を超えています。内訳としては、多いものから、うつ病、統合失調症、不安障害、認知症などとなっており、 近年においては、うつ病や認知症などの著しい増加がみられます。(毎日2019.2.07)
偏った食事が「うつ病」リスクを高める
うつ病は“生真面目で責任感が強い”という性格に加え、過剰なストレスが原因となって発症するといわれます。治療には主に「薬物療法」と「休養」が挙げられ、そのほか「環境を変える」「頑張りすぎない」などのストレス対処法がとられます。
そんななか、近年注目されているのが「食」によるうつ症状の改善です。
食の欧米化により、砂糖や油脂の多い料理、ファストフード、加工食品などが日本の食卓にのぼるようになりました。こうした栄養のバランスの悪い食生活が、うつ病のリスクを高めているとの指摘があります。
うつ病の原因は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの不足であるといわれています。セロトニンは睡眠や精神安定にかかわる物質で、不足すると睡眠障害や不安感などマイナスの精神症状に陥りやすくなります。実際、うつ病の治療薬として最も多く使用されるSSRIという化学薬品は、「選択的セロトニン再取込阻害薬」といい、セロトニンの欠乏を防いで神経の伝達機能をよくする効果があります。
セロトニンは、体内で生成できず、食事からしかとることができない必須アミノ酸「トリプトファン」からつくられます。イェール大学(アメリカ・コネティカット州)の研究では、血中のトリプトファン濃度が減少するとうつ症状の傾向が強くなり、トリプトファンを投与するとうつ症状が改善される、という報告があります。
また、国立精神神経医療センター病院(東京・小平市)でも、うつ病対策として、糖分や加工品の摂りすぎを避け、トリプトファンなどを多く含む魚や豆、野菜・果物などのバランスのよい食事を推奨しています。加えて、ビフィズス菌や乳酸菌など、うつ病の患者さんに少ないといわれる善玉菌を増やす乳酸菌飲料や緑茶の摂取を奨励し、効果をあげています。
トリプトファンを摂取しやすい食材とは?
トリプトファンは1日に6000㎎以上とりすぎると肝臓に障害が出るおそれもあるので、サプリメントではなく、食事から摂取することが大切です。
牛・豚などの赤身肉やレバー(200~280㎎)、ナチュラルチーズ(320㎎)などの乳製品、カツオ・マグロなどの青魚(300~310㎎)、スジコ(330㎎)・タラコ(280㎎)などの魚卵、豆腐(100㎎)や納豆(240㎎)などの大豆とその加工品、果物ではバナナにトリプトファンが多く含まれています(いずれも100g当たり)。特におすすめは、トリプトファンが100g中10㎎含まれるバナナと、100g中40㎎含まれる牛乳の組み合わせ。手軽に摂取できるうえ、バナナの糖質がトリプトファンの吸収率を高めてくれます。
また、トリプトファンは炭水化物(ごはん、パン、麺類など)と一緒にとると吸収率がアップします。さらに、ビタミンB6(レバー、魚、サツマイモなど)や鉄分(レバー、貝類、海藻類、ほうれん草など)、を含む食品を一緒にとると、セロトニンへの合成が効率的にできるといわれています。
トリプトファン摂取量と注意点
トリプトファンの目標摂取量(成人)は、一般に体重1㎏あたり2㎎(/日)で、体重60㎏の場合は120㎎。毎日の食事から100~200㎎は自然に摂取できるといわれますが、不規則で偏った食事になりがちな場合は、トリプトファンの食物含有量を意識して多めに食べるとよいでしょう。
なお、うつ病の治療薬をすでに服用している場合は、トリプトファンの過剰摂取で血圧や心拍数の変化、脳血管収縮障害などが起きる恐れがあるので、うつ症状に適した摂取量を事前に専門医に確認する必要があります。また、セロトニンは日光を浴びると合成が促されるので、散歩などすると効果的です。
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