マイケル・バーリ Michael-Burry 慧眼の相場師

人物

医者から投資家に転身した、異例の投資家マイケル・バーリ。

マイケル・バーリ(Michael Burry)は医師から投資家に転身した異例の人物です。バーリは、2歳のときに珍しい型の癌を患って、腫瘍を除去する手術を受けた際、左の眼球を摘出されて以来、片方の目を義眼とし、「隻眼の相場師」と呼ばれるようになりました。マイケルルイスの作「世紀の空売り」原作の映画「マネー・ショート」のモデルです。

勉学にも長けていたバーリは“特に難関とも思えなかった”という理由で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の経済学と医学部を卒業したのち、ヴァンダービルト大学医学部を卒業し、スタンフォード病院に勤務します。このスタンフォード病院で勤務していた時、バリュー株投資に関するブログを書き始めます。バリュー株投資といえば、ウォーレン・バフェットやベン・グレアムが重鎮としているわけですが、彼らについてかなり勉強していたそうです。

このブログが資産運用会社のバンガードやバリュー投資をするヘッジファンドのマネージャーだったジョエル・グリーンブラットなどの目に止まります。そして2000年に、29歳と言う若さでヘッジファンドのサイオン・キャピタル (Scion Capital)を開始します。

小学生のころ、父親に新聞の株価一覧を見せられ、「株式市場は歪みきった場所だから決して信用してはいけないし、まして投資などするものではない」と聞かされて以来、その仕組みがバーリをずっと魅了し続けていました。

株式市場に関する本を趣味として読み始めて程なく、チャートにもグラフにも波動にも株のプロを自称する多くの人間たちの長広舌にも、まったく論理などないことを理解し「わたしは自分を“バリュー投資家“だと認定しました」と後に述べるようになります。

ベンジャミン・グレアムが様式化した“バリュー投資”は、時代遅れな企業や不当に過小評価されている企業の株を、清算価格より安く仕込むために、あくなき探求の姿勢が求められる投資手法でした。この“探求の姿勢”こそ、バーリの性格にマッチしており、やがてバーリはこの世界で大きな成功を収めることになります。

「サイオン・キャピタル」というヘッジファンドを設立します。

医師時代からブログなどで情報発信をしていたバーリは、投資の世界でも名が通っており、資金調達も順調に行うことができました。バーリは100万ドルをやや上回る資金を元手にサイオン・キャピタルを始動させ、創業1年目の2001年にはS&P(スタンダード・アンド・プアーズ)500種株価指数は年間で11.88%下落している中、+55%の収益を記録。翌年には、株価指数が22.1%下落したのに対し、さらに16%の上昇。2003年には、株式市場の+28.69%上を圧倒的に上回る+50%の収益を得ています。リーマンショックでも莫大な利益を上げていますが、それ以上に、損失を一度しか出していません。

事業を始めたときのマイケル・バーリは“適正な”動機を忘れないように心がけていたと言います。典型的なヘッジファンド・マネジャーは預かり資産の2%を手数料として受け取り、莫大な額の他人の金を集めるだけで収益を得ていました。しかし、サイオン・キャピタルは、投資家に非常に少額の経費しか請求せず、株式投資において収益を得ることこそ、事業の本質だということを非常に大切にしていました。ファンドサイズも5億ドルと比較的小さいものです。

過小評価を見抜き、ロングする手法

バーリはなんのレバレッジも用いず、株の空売りもしませんでした。普通株を買う以上のことはせず、部屋にこもって財務諸表を読む以上に複雑なこともしません。誰にでも入手可能な <10Kウィザード> (四季報のようなもの)の情報とデータを丹念に読み、裁判所の裁定、成立した交渉、政府の規制変更など、企業の価値の変動につながりそうな情報に何にでも目を光らせていました。

サブプライムローンの破綻にかけCDSに多額の投資を行い、世紀の大儲けをしますが、基本的にサイオンは株式市場に対して“ロング”する、つまり株が上がる方に賭ける志向のファンドでした。その理由についてバーリはこう言っています。

「株を空売りする際のリスクには、理論的に上限がないというのも、ショートを嫌う理由の一つである。空売りのリスクの最低値はゼロだが、最高値は天井知らずなのである。」

バーリのような経歴をもつ投資家は珍しいかもしれません。しかも、かなり個性的です。トレーダールームでヘビメタを爆音で聞きながら仕事をしています。しかし、注目すべきは彼の経歴ではなく、投資家としての実力です。バリュー投資の真髄は、本質的な価値の高いものをきちんと見極めて、それの価値が上がるまでしっかりと保有・買い付けを行うことです。

短期的な価格の変動や小手先のテクニックに左右されず、きちんとした”戦略”をもって投資を行うことが非常に重要であることを、バーリから学ぶことができます。一方で、個人投資家が取るべき戦略として、バリュー投資は決して簡単なものではありません。企業の価値を緻密に精査し、投資先を見極めるには、それ相応の知識や経験、そして労力(時間)が必要になります。

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