サイゼリヤ「値上げをしない」宣言 逆張り戦略

社会考察

イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」は違う戦略を取りました。世間の流れと違う逆張りに打って出ています。

ファミレス業界でも昨年の夏に「デニーズ」や「ロイヤルホスト」、秋には「ガスト」が値上げを実施しており、業界全体で値上げを行うか否かの瀬戸際にある状況と言える。

2022年10月12日の記者会見において、松谷秀治社長は「値上げをしない」と宣言。その発言の裏側には、円安によりアジアを中心とする海外の約500店舗の増益が見込めるので、値上げしなくてもいいという算段があるという。しかも、松谷社長は会見でさらなる値下げをも検討していることも語っていた。また2023年1月11日に行われた記者会見でも、重ねて値上げしない方針を明らかにした。

為替変動のリスクを回避するために、海外展開によって分散がうまくいっています。2022年8月期の地域別セグメントでは、売上高が日本は1011億2600万円、豪州は56億9000万円、アジアは431億1700万円。利益が日本はマイナス21億100万円、豪州が1億2300万円、アジアが22億3400万円となっている。

もともとサイゼリヤの財務は、盤石なことで知られる。貸借対照表を見ると、自己資本比率は63.5%と、飲食業界内ではかなり高い水準にある。サイゼリヤのブレない経営姿勢の背景には、そうした土台の頑丈さもある。

日本生産性本部サービス産業生産性協議会が発表した「JCSI(日本版顧客満足度指数)」によれば、サイゼリヤは2年連続で「顧客満足度」1位を記録するなど高い評価を受けており、実際その安さとクオリティの高さに惚れこみ、ファンを公言する人はとても多い。

革新的セントラルキッチン方式

サイゼリヤがメニューを安く提供できている理由、チェーンならではの調理方式にあるという。

サイゼリヤでは、調理工程の大半を一ヵ所でまとめて行うセントラルキッチン方式を導入しています。工場で出来立ての料理を冷凍して真空パックにした状態で店舗まで届けるので、店舗キッチンでは最小限の調理だけしてお客に提供できます。

具体的に言うと、基本的に電子レンジで温めるだけというメニューが多く、各店舗にはフライヤー(揚げ物機)すら入れていない。このセントラルキッチン方式をいち早く導入したのがサイゼリヤで、今では追随して導入しているファミレスチェーンも多いです。この方式だと店舗での調理コストが抑えられますし、価格も安くできる。

サイゼリヤには調理専門の工場が存在し、ステーキ肉からサラダ用の野菜まですべてカットされた状態で店舗まで届けられるそう。そのためサイゼリヤの店舗では多くのメニューが電子レンジで温めるだけで、店内の厨房には包丁すらないというのは有名な話である。

アルバイトしている友人の話では、無駄な作業や工程を踏まないように徹底しているといいます。経験や感覚的に仕事をするのではなく、合理的で非効率さを回避し、数学的な思考でマニュアル化されているようです。創業者の正垣泰彦会長は理科系らしく「エネルギー不滅の法則」という物理の概念に取り入れていると言われています。

  • エネルギーが、ある仕事を介して変換する場合、外部からの影響を全く遮断してあれば、物理的、化学的変化があっても、全体としてのエネルギーは不変であるという原理。 無からエネルギーを創造しえないことを示す物理学の根本的原理。 1840年、ヘルムホルツ、ロバート=マイヤー、ジュールらによって確立。

セントラルキッチンでの成功は、すでに知られた話で、ライバル企業は導入し、さらにIT化で上をいっています。サイゼリアはむしろ遅れている方です、キャッシュですら導入は最後発です、今どき現金?という圧力に押された形で導入しています。

最近の円安など材料費、人件費高騰に抗って価格を維持するためには、ほかにも目新しい戦略がある。店舗では大型のコンロを設置せずに、スペースを取らないテーブルに置ける電気コンロを導入するなど、キッチンのスリム化を図った改装も行われています。厨房設備をなるべく少なくして、さらに効率よく営業していこうという方針です。

キッチン面積は一時期に比べて半分ほどになったそうで、その分、客席数を増やせるので、回転率が上がり売上アップにつながっている。

サイゼリヤは、メニュー開発から食材の生産、加工、調理までを一貫して行う『製造直販』という形態で勝負しています。すべてを自社で賄えれば、中間段階の手数料を省けます。

レタスなど品種改良の研究開発も行っている。が、これはサントリー時代の「サブウェイ」もやっていたことがあり、あまりうまくいかなかったような・・・

さまざまな企業努力によって、お客の満足度を高めてきたサイゼリヤ。ここまで価格を抑えつつ、メニューを提供してきた背景には創業者・正垣泰彦氏の想いがあったという。

正垣氏がサイゼリヤの前身となるイタリア料理店を経営していた際に、お客が来なくなった時期がありました。どうにかして再びお客を呼ぼうとした正垣氏は、なんとメニューの販売価格を“7割引き”で提供し始めたのです。この頃からサイゼリヤには、お客に安く美味しいごはんを食べて喜んでほしいという想いがあり、現在までその精神は引き継がれている。

創業初期から価格の安さには一際こだわっていた一方で、やむなく値上げを敢行した時期もあれば、2021年11月には「辛味チキン」の数を5本から4本に減らすといったマイナーチェンジを実施し、事実上の値上げを行ったこともあった。

サイゼリヤの低価格路線に異を唱える業界関係者も多いのです。飲食業界はただでさえ従業員の所得が少ない業界であるにもかかわらず、お客が低価格を求めてくることもあって、ここ30年間ほどは安売り競争の状態が続いています。そのため、従業員の給料が増えなかったり、ブラックな労働環境が横行したりすることが珍しくありませんでした。

 

社会考察
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました