フライドチキンは黒人が好む食べ物として映画やドラマでは、揶揄する表現として使われていました。白人はステーキ、黒人はチキンといった具合に。鶏だけが唯一「奴隷でも飼育してよい」動物だったためと言われます。
風向きが大きく変わってきたのは、2010年代から始まるチキン系チェーン店の躍進、そして「チキンサンド戦争」と呼ばれる競争があり、これが今でも継続されているようで、定番化しているといいます。と同時に「黒人の食べるもの」というステレオタイプの表現も薄れているようです。
日本で米国のチキン系チェーンと言えば、KFC(ケンタッキーフライドチキン)。というか、それしかありませんが、米国ではポパイズ・ルイジアナ・キッチン(Popeyes Louisiana Kitchen)、チックフィレイ (Chick-fil-A) 、KFCの人気順番と言われます。
チックフィレイ (Chick-fil-A)
このチキンサンドブームに火付け役はチェーン店でした。そこから個人店にも波及してバリエーションを広げていきます。
2010年代に入り急激な成長を遂げたチックフィレイ、2018年にはマクドナルド、スターバックスの次ぐ規模のチェーン店に台頭します。売上ではサブウェイ、バーガーキングなどを凌駕します。
創業者であるS・トルエット・キャシー(S Truett Cathy)氏は、米国史上最も優れたクリスチャン起業家の一人の一人と言われています。南部バプテスト連盟の信者のため日曜日は営業をせず、中絶・同性婚・LGBTなどに反対の姿勢を取ってるため、保守派から人気を集め、リベラル派からは嫌悪する人も多い。
47州に店舗がありますが、米国南東部に集中している。個々の店舗の平均売上高は400万㌦で、トップのマクドナルドの倍、日曜日休業で。
最初からファーストフードではなく、ジョージア州ハペビルに「ドワーフハウス」というレストランから始まります。フォードの工場があるエリアで労働者で繁盛します。
1967年、人気のあったチキンサンドをメインにし、ファーストフード形態店舗をグリーンブライアー・ショッピングセンター内に出店し成功を収めます。そのためチックフィレイはモール店舗が多く深い関係性が保たれています。
キリスト教の理念に基づいた経営をしているため、レストランからファーストフードの移行も野心的なものではなく、どちらかというと「仕方なく、やもうえず」という感じです。
レストランは2店舗ありましたが、2号店は火災で消失してしまいます。が、人気メニューだったチキンサンドの需要に追いつかず、品質管理を容易に行えるファーストフード形態でショッピングモールに出店したことが、拡大することに繋がります。
ポパイズ・ルイジアナ・キッチン(Popeyes Louisiana Kitchen)
2019年8月、新商品の「フライドチキンサンドウィッチ」を発売します。この店ではバンズとサンドするバーガー商品はなく、明らかにチックフィレイを意識した対抗商品でした。しかも30年ぶりの新商品。
挑発的なやり取りをSNSで繰り広げ、他のファーストフーでチェーンも便乗し、消費者による口コミ投降で盛り上がります。
ブリオッシュ生地のバンズでフライドチキン、ピクルスを挟んだシンプルなバーガーだが、発売すると一躍人気に。店舗にチキンサンドを求める客が殺到し、わずか2週間で在庫切れとなってしまった。
全米各地にある店舗では、話題の新商品をオーダーするのに数時間待ちでき、客同士のトラブルなどが頻発。テキサスのヒューストンでは品切れが原因で銃による事件も。完売後、3か月後の11月に販売再開するが、客同士の口論が発端による殺人事件が起こってしまう。
ポパイズ。ニューオーリンズスタイルの調理方法を広めたことで、有名になりました。
1972年にルイジアナ州ニューオーリンズで生まれ、米国を中心に3700以上の店舗を持つファストフードチェーンで、ケイジャンスタイルのフライドチキンを提供します。
日本語ではポパイズと呼んでいますが、発音はポップアイのようです。
チキンサンド戦争は、この2社で起こったものを指しますが、日本で圧倒的存在感があるKFCは、影が薄く、影響力は低いようです。
興味深いのは、SNSを使ったマーケティングが巧みで功を奏したこと。競合ブランドを挑発したり、親近感のあるメッセージを発信したりと、ブランド認知を上げることに成功しました。立場的には挑戦者ですから、許される文化的土壌もあったと思われます。
さらに黒人奴隷の歴史も含まれる食文化のため、黒人ユーザーが集まるコミュニティーへの配慮も欠かしませんでした。
日本ではコロナの最中に「からあげ」ブームというのが、苦境にあえぐ外食業界主導で生まれましたが、消費者が熱することなく下火になりました。
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