電子書籍で失敗しAmazonに惨敗した老舗書店チェーンがリアル書店で売上を好転させる。
Amazonの台頭により、かつて書店でしか手に入らなかった「本」は自宅にいながら購入できるようになりました。街中に店舗を構える書店が軒並み縮小していくなか、昔ながらの本屋であるバーンズ&ノーブルが再び成長を遂げています。
バーンズ・アンド・ノーブル(Barnes & Noble, Inc.)
アメリカ合衆国で最大の書店チェーンであり、また最大の専門小売店である。2009年10月現在、同社はアメリカの50州とコロンビア特別区で合計777の店舗を運営している。2020年12月現在、投資運用会社Elliott Managementが所有している。
大規模で高級感のある店舗を構えることで有名で、多くの店舗がスターバックス・コーヒーを提供する喫茶コーナーとベストセラー本を値引き販売するコーナーを設置している。ほとんどの店舗で雑誌、新聞、DVD、劇画、贈答品、ゲームや音楽メディアを併売している。
創業は1965年。ニューヨーク大学の学生で、大学内の生協でアルバイトをしていたレオナルド・リッジオが、「本を売るなら、自分でやったほうがうまくゆく」とグリニッジ・ヴィレッジに小さな学生向け書店をオープンしたのがきっかけ。優れたサービスと知識豊かなスタッフのおかげで評判になり、1970年代には6店舗を展開するまでに拡大。その後、5番街の書店を買い取って総合書店へ転身し、全米に積極的に進出した。
レオナルド・リッジオの兄弟であるスティープ・リッジオが2003年1月から2010年3月までCEOを務めた。スティーブ・リッジオは電子書籍への対応に出遅れ、2010年8月には身売りが検討されていると報じられている。
2019年6月7日、投資運用会社Elliott Managementはバーンス・アンド・ノーブルを6億8300万ドルで買収すると発表。8月7日に買収を完了した。
バーンズ&ノーブルは1886年に設立され、20世紀に繁栄を極めましたが、デジタル時代の到来により衰退の兆しを見せ始めます。
一時期、バーンズ&ノーブルはshoppingmode Amazonのまねをしてオンライン販売を強化し、独自の電子書籍リーダー「Nook」を導入しましたが、ほとんど成功しませんでした。2011年に実店舗での有力な競合相手であるボーダーズが倒産した後も勝つための戦略を見出すことができず、2018年には完全に崩壊していたとジョイア氏は指摘します。
この年、バーンズ&ノーブルは1800万ドル(約20億円)の損失を出して1800人の正社員を解雇、ほぼすべての店舗をパートタイムスタッフによる運営に移行しました。また、セクシャルハラスメントの申し立てがあったことから、CEOを解雇しました。
既存店の売上もオンラインの売上も減少し、株価は80%以上下落。デジタル化の大本命である電子書籍リーダーさえも売上が90%以上減少してしまい、ボーダーズと同様に消滅するかに思われたバーンズ&ノーブルはさまざまな改善策を実施します。
一時期、バーンズ&ノーブルは売り場の大部分をおもちゃやグリーティングカード、カレンダーを売るために改装していました。さらに店内にカフェを設ける構想「バーンズ&ノーブル・キッチン」というレストラン計画を実行しましたが、どれもうまくいきませんでした。
苦境のさなかにあった2019年、バーンズ&ノーブルは新たにジェームス・ドーントというビジネスマンをCEOに迎えました。ドーント氏は26歳の時にロンドンで1軒の書店を始めて成功を収めた人物であり、すでにイギリスで苦境にあった書籍小売チェーン、ウォーターストーンズを立て直した実績のある人物でした。
ドーント氏は「本が高すぎるとは思わない」という理由から「価格競争が激しくても本の値引きをしない」という信条の持ち主でした。ウォーターストーンズ買収時、ドーント氏は「2冊買うと1冊無料」というキャンペーンをすべて止めましたが、その理由を「無料で提供することは、その本の価値を下げることになるから」と述べています。
ドーント氏がウォーターストーンズで行った最も驚くべき戦略は「出版社から宣伝費をもらわない」ということ。一度お金を受け取れば常に店内の最も目立つ場所に宣伝用の本を積み上げなければならないという「悪魔の契約」をドーント氏は拒否し、最高の本をショーウィンドウに並べようとしたのです。
さらに驚くべきことに、ドーント氏はその決定を店の従業員に任せたそうです。これについてドーント氏は「スタッフが自分の店をコントロールすることで、仕事をもっと楽しんでくれることを願っています」と説明していました。
この戦略は功を奏し、ウォーターストーンズでの返品はほとんどゼロになり、棚に並べられた本の97%が購入されたとのこと。これは書籍の世界では驚異的な数字であるとジョイア氏は指摘します。
この成功をもとにバーンズ&ノーブルのCEOに就任したドーント氏ですが、新型コロナウイルス感染症が流行し始めた年であったため、タイミングは最悪でした。
しかしドーント氏はパンデミックを機に店内のすべての棚から本を取り出し、その本を置いておくかどうかを判断するよう従業員に求めたほか、「知的に満足できる、気取った感じではない、心の糧になるような書店」になることを望んで品ぞろえを改革していったそうです。
これらの戦略によりバーンズ&ノーブルの書籍の売れ行きは再び伸び始め、2021年の売上はパンデミック前の水準に戻り、その後も伸び続けました。読者は会社への信頼を取り戻し、店員もやる気を取り戻していったとのこと。
「バーンズ&ノーブルの再建からは、本と読者を第一に考え、それ以外のことは第二に考えるという教訓を得ることができます。これは本以外にも言えることで、音楽を売りたければその曲を愛さなければなりませんし、ジャーナリズムで成功したければその新聞を愛さなければなりません。
このような愛を教えることはできなくても、見ればわかるものです。こういうことに熱中している人たちや献身的に信じている人たちを見つけて雇えばいいのです。そういう人たちこそ信頼できる人たちです」と述べました。
日本でも書店は、どんどん減少しています。
2012年に全国に1万6722店あった書店は2022年には1万1952店と、10年間で約3割減少した。 書店数がもっとも多いのがイギリスで約3万5,000店, 次いで日本1万6722店,アメリカ約1万3000店, ドイツ4386店, フランス約1000店となっている。
釧路発の巨大書店複合店「コーチャンフォー」
リアル店舗を増やし続ける書店がある。北海道・釧路市に本社を置くリライアブルが店舗展開する、書籍・文具販売を中核とする大型複合店「コーチャンフォー」。
「1日中いられる」と話題になっており、地域性を重視している店作りとなっています。
5000㎡から10000㎡を超えるの売り場面積の書店。関東の一番大きなヨーカドーで売り場面積40000㎡です。ワンアイテムでこれだけの広さの売場ですから、圧倒的な品ぞろえです。高齢者でも歩きやすいようにと配慮したワンフロアでの郊外出店が特徴で、を道内中心に8店舗展開しています。
全国的に地域の書店は廃業が相次いでいる。この店舗は大型化で生き残りを測っている。
2018年春に食品販売始める。これが中途半端に終わるか?TSUTAYA書店などでも食品の販売を始めたが、よほど特色を出せない限り、専門的にはかなわない。もちろんAmazonにも。
「コーチャンフォーマルシェ」と銘打ち、売り場一角の70~130平方メートルのスペースに専門コーナーを設置。成城石井から仕入れたワインをはじめドレッシングやジャム、菓子類などのほか、佐藤暁哉社長を筆頭に各店舗の担当者ら約10人で組織した「マルシェ開発チーム」が道内企業とコラボしたオリジナル商品も並べている。
2022年3月期の売上高は141億3600万円。日経MJ専門店調査によると、書店業界14位に付ける。2022年10月には茨城県つくば市に「コーチャンフォーつくば店」を開業。関東では若葉台店(東京都稲城市)に次ぐ2店舗目。本を売るだけという従来の枠にとらわれず、書店の可能性を追い続けている。
日本の出版業界の闇と言われる再販制度。本が売れない時代に、約7万冊の新刊が毎年店頭にならぶ。
本が売れない時代に、なぜ多くの新刊が出るのか?
出版不況といわれて久しく、本の販売額は20年以上減り続けています。ピークの1996年には1兆円以上もの書籍が売れていたのですが、2020年には7,000億円を下回っています。本好きの私としては寂しい限りですが、一方で、毎年、約7万点もの本が新たに出版されています。7万点というと、1日あたり200点にもなります。
全体の販売額が減っているのであれば、新刊点数も減りそうなものですが、新刊点数は20年前とくらべても減っていません。減っているのは、新刊1点当たりの販売額です。書店の店頭には、昔も今も、多くの新刊が並んでいます。
本以外のほとんどの商品は売れ残ると値引きされますが、本には値引きがありません。本は、売れ残ると、値引きされずに出版社に返品されます。
この仕組みのおかげで、出版社は自分の決めた定価でさまざまな本を出すことができ、書店は安心して定価販売ができ、私たちは誰もが同じようにさまざまな本を手にすることができます。
書店は、新刊と入れ替えるときにも返品します。新刊点数が多いこともあり、多くの本は、店頭に並ぶ期間があまり長くありません。本の返品率は30%以上にもなります。
出版社は、返品されてしまうので、新刊を出します。新刊を出せば、また書店に並びます。新刊1点当たりの販売額が減っているなか、新刊を出すことで売上を作っている面があるのです。
出版社は、本を、取次といわれる問屋に卸します。卸した時点ではまだ返品の可能性がありますが、売上代金が入金されるケースもあります。この場合は、新刊を出せば、すぐに現金を手にすることができます。
出版社の経営には、社員への給料、印刷代、著者への印税など、お金がかかります。なかには、手元の現金が足りない場合に、新刊を出すことで現金を手にして、支払にあてる出版社もあるといわれています。
他の業界では経営の苦しい会社は新商品を出せないことも多いのですが、出版社の場合は、経営の苦しい会社が新刊を次々と出すこともあります。資金繰りは会社経営を左右します。黒字でも現金がなくなれば倒産しますし、赤字でも現金があれば倒産しません。会社経営では、現金が重要なのです。
コンビニのある雑誌コーナー絶滅危機に… 約9割の人が「買ってない」
コンビニの雑誌コーナーに”異変”が起きている。雑誌売り場が縮小する。
近年、コンビニの雑誌コーナーに”異変”が起きている。かつてはファッション誌や週刊誌、専門誌などが多数置かれていたが、最近は一部の漫画雑誌や人気コミックの最新刊がある程度…という店舗が増えている。
都心部では、そもそも雑誌コーナーがない店舗もある。一昔前は外から見える場所に雑誌売り場があり、「立ち読みする人がいると客の呼び込みになる」と言われるほど、コンビニには欠かせないコーナーの一つだった。
だが、最近は立ち読みはおろか、雑誌コーナーに立ち寄る人さえあまり見なくなった印象を受ける。
スマホが普及し始めた2010年ごろから、週刊誌やファッション誌に掲載される情報がネットニュース、SNS等でいち早く知ることができるように。雑誌を必要としなくなった結果、返本する数は年々増えていますし、売り上げは右肩下がりです。コンビニに足を運んで雑誌を買う習慣が薄れつつある。
コンビニで売れる雑誌も限られている。「『少年ジャンプ』『少年マガジン』などの漫画雑誌、あとはバッグやポーチなどの付録に重点を置いた一部の雑誌は売れる。ただ、週刊誌やファッション誌は厳しい状況で、最近はそれらを扱う店舗が減っている。それどころか、新しくできる店舗では雑誌コーナーすら設けていない。
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