脳が衰えない高齢者「スーパーエイジャー」研究進む
2022年12月5日 16時15分 CNN.co.jp
80歳を越えても20~30歳下の年代と同じ脳の働きを維持している「スーパーエイジャー」たちの研究に、米シカゴのノースウェスタン大学医学部が取り組んでいる。
チームは14年前から、記憶力の優れた高齢者を募って研究を進めてきた。スーパーエイジャーという専門用語も同大学で誕生した。
80歳以上の高齢者が詳しい認知機能の検査を受け、50~60代の正常な人々と同じかそれ以上の記憶力がある場合に限って、研究対象に入ることができる。特に、日常の出来事や過去の経験をよく記憶していることが条件だという。
応募者の中で条件に合うのはわずか10%ほど。知能指数(IQ)検査の結果は平均的な高齢者とあまり差がなく、知的レベルだけの問題ではないと考えられる。
対象に選ばれた人々の脳を三次元(3D)スキャンで調べた後、認知機能の検査と脳スキャンをほぼ毎年繰り返してきた。
ほとんどの人は年を取ると脳が委縮していくが、チームによるとスーパーエイジャーでは思考や判断、記憶をつかさどる大脳皮質の厚みが変わらず、50~60代に比べて脳萎縮のペースも遅いという。
スーパーエイジャーの脳は本人の意思で死後に寄付されることが多い。それを調べると、アルツハイマー病で最初にむしばまれる領域のひとつである「嗅内野」に、より大きく健康な細胞が多いことが分かる。
嗅内野は記憶と学習に欠かせない領域で、記憶保持を担うもうひとつの主要な領域「海馬」と直接つながっている。
亡くなったスーパーエイジャーの脳を年上や年下の正常なグループ、初期のアルツハイマー病と診断されたグループと比べ、研究結果を今年発表した同大学の准教授によると、スーパーエイジャーでは神経細胞に蓄積してアルツハイマー病などの認知症を引き起こす「タウたんぱく質」の量が、健康なグループの3分の1しかなかった。
スーパーエイジャーの脳では、脳内の素早い情報伝達に役立つとされる紡錘(ぼうすい)形の細胞「VEN」の数が多いことも分かった。VENがある「前帯状皮質」は、情緒のコントロールや注意力に重要な役割を果たすと考えられている。
これらの研究結果からうかがえるのは、スーパーエイジャーになるかどうかに遺伝的因子が絡んでいるということ。ただ確認するには、対象者が生まれてから死ぬまで神経細胞の大きさなどを測り続ける必要があり、それは明らかに不可能だ。
チームによると、スーパーエイジャーに共通するのは活動的かつ前向きで、毎日脳を刺激し、読書をしたり新たなことを学んだりしているという特性。社交的で家族や友人に囲まれ、地域のボランティア活動にも積極的に参加することが多いという。
脳の老化、アミロイドβ
脳の老化の要因として、アミロイドβという老廃物の蓄積がよく知られています。
アミロイドβは健康な人の脳にも存在していますが、くっついて異常なアミロイドβになると脳に溜まってしまい、健康な神経細胞にまとわりついて脳を萎縮させる原因となります。
脳萎縮が加速していくと記憶障害などが起こり、アルツハイマー型認知症に進展していくのでは、と研究者の中では考えられているのです。
従って脳萎縮が少ないスーパーエイジャーたちはアミロイドβが体に溜まりにくい生活習慣を実践しており、そのことによってアルツハイマー型認知症などを遠ざけていると考えられています。
スーパーエイジャーの研究が進んでいる米国では、彼らの生活の仕方や習慣を知ることが非常に重要である、と考えられ始めています。
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