コロナ禍の中、もがいたほうが赤字に苦しみ、何もせずほじょきんにファミリーレストランの2大勢力、すかいらーくとサイゼリヤ。両社の業績に明暗が分かれている。順調な回復を見せている「明」のサイゼリヤ。それに対して、すかいらーくは「暗」。今期の決算は赤字に転落する見通しだ。
すかいらーくはデリバリーを自前でできるようにしたり、タブレット注文、自動配膳ロボットを導入するなどDX(デジタルで競争優位に)化に取り組んでいる。
サイゼリアは、真逆の戦略。政府の補助金を目当てに極力なにもしない。サイゼリアは人員配置など数学的マネジメントを最初からやっているレストラン。アルバイトにも無駄な動きは許されず、作業工程で必要な歩数まで管理する時期もあったほど。トヨタみたいな管理方式。食材にかけるコストが他より大きいため、宣伝費にお金をかけず、キャッシュレス決済などもかなり遅れて導入している。
結局、食材にお金をかけて、美味しい料理を提供している、まっとうなところにお客さんが戻っている感じである。たくさんブランド抱えているすかいらーくグループなので、やもえないのか。
すかいらーくの2022年12月期第2四半期決算は、売上高にあたる売上収益が1416億円(前年同期比11.8%増)、税引前損失38億円(前年同期は19億円の損失)となっており、顧客は徐々に戻って来ているが、赤字が拡大している。
同社第2四半期決算書によれば、赤字の理由には、原材料価格や光熱費の上昇などインフレ進行、閉店に伴う減損損失及び給与計算に関する臨時損失計上などが挙げられている。その結果、通期の予測では売り上げは3120億円と1.2倍に回復するものの、20億円の赤字に転落する見通しだ。約100店の大量閉店を予定している。
一方、サイゼリヤの22年8月期決算は、売上高1443億円(前年同期比14.0%増)とコロナ前の水準に近づいてきた。経常利益は108億円(同211.8%増)で、コロナ前の19年を上回っている。利益率はコロナ前よりも高まっており、V字回復したと表現して良いだろう。
すかいらーくは、ガストをはじめ、ジョナサン、バーミヤン、しゃぶ葉、夢庵など、多種多様な業態の集合体。それに対して、サイゼリヤはほぼサイゼリヤという1業態を経営していて、単純比較は難しい。しかし、すかいらーくの不振にはガストの不調が大きく影響している。
顧客がなかなか戻ってこない
同じような低価格のファミレスである。なぜ、サイゼリヤが順調なのに、ガストは顧客がなかなか戻って来ないのだろうか。2019~22年における売上高の推移と、2022年1~10月の既存店売上高(前年同月比)の推移を見てみよう。 22年に入ってからの、既存店売上高の月次推移を見ていくと、全ての月でサイゼリヤの対前年比の伸び率が、すかいらーくのそれを上回っている。
しかも、10月こそ、両社の対前年比の伸び率は近接しているが、1~9月ではサイゼリヤが上回り続けている。 コロナ禍における売り上げの減少も、すかいらーくは19年比に対して20年は77%、サイゼリヤは81%で、すかいらーくのほうが影響が大きかった。 また、すかいらーくの売上高は今年4月以降に回復が本格化してきたのに対して、サイゼリヤは年初より一貫して回復していたという違いがあった。
原価率35%超、常識破りの価格設定
原価厨には、サイゼリヤは極めて原価率が高いことで知られています。すかいらーくの原価率は30%前後で推移していますが、サイゼリヤはコロナ前、コロナ後も変わらず35%を超えています。
サイゼリヤは安く、美味しく、メニューが豊富という印象を持つ人が多いはずです。それもそのはずで、それだけの原価をかけた料理を提供しています。洋食レストランの原価率は30%に抑えるのが飲食店経営のセオリーです。サイゼリヤは常識破りだと言えます。
もちろん原価率を高く設定することは戦略的に行っており、消費者に“安く、美味しい”というイメージを植え付けることで、消費者がブランドを想起する確率を上げています。
事実、広告宣伝費を含む販管費率はサイゼリヤの方が圧倒的に低くなっています。
ただ、原価率が高いため、サイゼリアには新しいサービスに挑戦できない状況にあります。客単価はすかいらーくのほうが高いため、客数の減少を補えますが、サイゼリアにはそれができません。
更に、原価率は2社ともにほぼ一定で推移していました。すかいらーくは売上高から原価を引いた売上総利益(粗利)が出やすい体制ができていましたが、サイゼリヤは粗利が出にくい状態を続けていました。この戦略の違いが明暗を分けたました。
すかいらーくは、テイクアウト・デリバリーの対応しています。2021年12月期のテイクアウト・デリバリーの売上高が500億円に達しました。全体の17.3%を占めています。
すかいらーくは自社配送できる体制を整えており、2020年末の段階で1都3県の93%をカバーするまでになりました。デリバリーは一般的に客単価が1,500円程度と高く、出前館やUberEATSをほとんど使わなければ粗利が出やすいのが特徴です。
「ガスト」にから揚げ専門店である「から好し」ブランドを導入し、2枚看板でテイクアウト・デリバリー需要に応えました。その動きも素早く、2021年1月には600店に導入しています。
新型コロナウイルス感染拡大により、レストランは営業時間に制限が課されました。つまり、客数が限られることになります。しかし、固定費(または販管費)はある程度一定なので、できる限り売上を作らなければなりません。テイクアウト・デリバリーはその穴を埋める有効な手段です。すかいらーくはテイクアウト・デリバリー需要を上手く獲得しました。
サイゼリヤもテイクアウト・デリバリーの試験導入を進めていましたが、成果は出ていません。2021年8月期は注力分野としてテイクアウト・デリバリーを掲げていましたが、2022年12月期の注力分野の記載からは削除されています。
粗利を低く設定して本部経費を抑えてきたサイゼリヤは、コロナで激変した商環境に適応する力を持てなかった可能性があります。2022年8月期は70億円の営業利益を見込んでいますが、どのような道筋で復活するのか。正念場を迎えています。
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