米国でTikTok“全面禁止”締め出すための段階を踏んでいるようです。中国製スマホ「ファーウェイ」も安全保障上の問題で、米市場から締め出されたケースと類似点が多いため、時間の問題かと。
動画投稿アプリ「TikTok」の利用は、政府職員の間では使用禁止の動きが広まっていますが、民間でも広がる気配です。若者に人気のあるアプリですから、自然発生的な排除ではないです。半ば強制を含んだ世論誘導です。
2017年にサービスを開始した中国企業が開発した動画アプリ「TikTok」。YouTubeの独占だった動画市場を侵食して、利用者は10億人。日本でも1500万人がアクティブユーザーと言われます。特に米国の企業がYouTubeから広告をシフトしているといわれ、YouTubeの親会社のGoogleの収益を脅かしています。
米国ので利用者数は2020年で4,540万人と推定されています。利用者数は増加傾向にあり、2021年までには5,000万人を突破していると思われます。
インドのTikTok利用者数は、2019年6月時点で1億2,000万人、2019年のダウンロード数は3億2,300万人を記録して、世界でもユーザー数が多い国でした。しかし2019年6月に政府がTiktokの禁止を講じ、更に2021年1月には禁止措置を恒久化する方針を通知しました。
これは、政治的要因が強く影響している。2020年6月15日の中印国境付近での衝突でインド軍兵士20人が死亡し、政府は強力な対抗措置を求める世論の圧力にさらされていた。中国とインドは国境付近で、小規模な軍事衝突を繰り返しています。インドもIT技術者大国ですからアプリの排除で、報復を求める世論の着地点としたようです。
こうした中、アメリカ議会下院外交委員会は2023/03/1、アメリカ国内でTikTokの利用を禁じる法案を賛成多数で可決しました。アメリカやカナダ、EUは2月以降、政府職員が仕事で使う端末でのTikTokの使用の禁止を次々と発表していますが、今回の法案は民間人も含めて利用を全面的に禁止するものです。
この法案を提案したのは野党・共和党のマコール外交委員長。
「TikTokは国家安全保障上の脅威だ。スマホなどにTikTokのアプリをダウンロードしている人は個人情報を中国共産党に知られてしまう。言うなればスマホの中の偵察気球だ」と中国から飛来した偵察気球に例え、個人情報が流出すると訴えた。
この法案の審議の最中には「中国は敵ではない」と、傍聴席から訴える人が審議を遮る場面もありました。法案は外交委員会では可決されたものの、成立には上下両院の本会議での可決とバイデン大統領の署名が必要で、今後成立するかは不透明ですが、成立すれば1億人を超える利用者に影響が出るため審議の行方に関心が集まっています。
一方、このアメリカ議会の動きに中国政府は反発。「中国はアメリカが国家安全保障の概念を広げ、国家権力を乱用し、他国の企業を不当に抑圧することに断固反対する」(中国外務省の毛寧報道官)
TikTokを使うと情報が漏れる?
ITアナリストのほとんどが、「まるわかり」といいます。名前や電話番号、連絡帳を同期させる機能があり、位置情報も把握できる。これは中国アプリに限りません。Instagramも位置情報が特定でき、それが原因で、有名ラッパーが射殺される事件も起きています。
投稿内容、閲覧履歴から、住んでいる場所、通っている学校、生活水準、趣味、ライフスタイルの傾向も全てわかってしまいます。日本でもなにか問題が発生すると執拗に調べる人たちがいますから、匿名性などあってないようなものです。
問題はこれを組織的に情報収集して、中国政府に献上している可能性もあるということです。中国では、安全保障のための協力は、法律で義務付けられています。TikTokの従業員が知っていることは、中国政府も知っているということです。
TikTokの匿名の元従業員は、同社の社員らが中国と米国のデータを簡単に切り替えることが可能で、TikTokのアプリには中国人エンジニアがアクセス可能なバックドアが存在すると証言している。フォーブス誌などの記者の個人情報を不正に入手していると、報じられており疑念は強まるばかり。
バックドア( backdoor)
バックドアは、本来はIDやパスワードを使って使用権を確認するコンピュータの機能を無許可で利用する目的で、コンピュータ内に(他人に知られることなく)設けられた通信接続の機能を指す。
バックドアには、設計・開発段階で盛り込まれるものや、稼動中のコンピュータに存在するセキュリティホールを使って送り込まれたソフトウェア(トロイの木馬と呼ばれる類の偽装ソフトウェア)によって作られるものも含まれる。
アメリカ合衆国連邦政府では、CALEAがインターネットアクセスにも拡大適用されたことにより、アメリカ合衆国内で使用されているほとんどの通信機器に、あらかじめ政府機関からのアクセスを許容するバックドアが設けられている。これを使用した傍受には法的手続きを必要としているが、運用方法は不透明であり、アメリカ国家安全保障局のPRISMにより、個人情報が容易に取得されてしまうことも懸念されている。
アメリカ合衆国下院の情報通信委員会は「中国通信大手の機器は危険」として、中華人民共和国製ルーターやスイッチングハブなどの通信機器に、アメリカ合衆国連邦政府の内部情報を盗むバックドアが、政治的な動機によって組み込まれていると発表している。
一部の従業員が勝手に行った行為という言い訳が通じる相手ではありません。米国は多様性に飛んでいる国ではありますが、安全保障が絡むと強権的な排除を行います。
すでに民間でも排除する動きは強まっており、保守的な州では規制がかかるのは時間の問題です。
テキサス州のテキサス大学オースティン校では2023年1月から学校内でTikTokの使用が禁じられました。排除命令は、大学校内のWi-Fiに繋いでいるときはTikTokにアクセスできなくなるというものです。オクラホマ州の大学も追随している。
アプリ自体の規制は州単位ではできません。連邦政府での全面的な禁止が必要です。「セキュリティー上の問題」でこれを行うのか?中国との貿易戦争ですからインドのように、ためらわないのかも知れません。
間違いなく日本も追随するでしょうから、ティックトッカー(TickToker)で生計を立てている人は、深刻な影響を受けるかも知れません。アプリ開発に後れを取っているから、影響はそんな程度です。日本製のアプリが活躍できるチャンスかもね。
コメント