プリンス、マイケル・ジャクソンが鎮痛剤の過剰摂取で亡くなった人で、有名ですが、定期的に鎮痛剤のよる死因が取り沙汰されています。
アメリカで鎮痛剤の飲み過ぎで死亡する人が多発。死者16000人「薬のリスクとデメリット」
2000年に、シンという研究者たちによって報告された論文で言及されています。この論文によると、アメリカでは、痛み止めのNSAIDsによる副作用で、年間10万人以上が入院し、16000人以上が死亡したとのこと。
これはなかなか衝撃的な数値。
まず、痛み止めによって、どんな副作用が出るのか。まずは基礎知識といたしまして、NSAIDsという言葉を説明します。これは日本語で「非ステロイド性抗炎症薬」といいます。
ステロイドではなく、炎症を抑える薬です。おなじみの痛み止めである、バファリン、イブ、ロキソニン、ボルタレンなどは、全部これに該当します。痛み止めといえばNSAIDsなのです。1個だけ例外があり、アセトアミノフェンという成分は、NSAIDsに該当しません。
NSAIDsの副作用には、第一に挙げられるのは胃腸障害です。これはNSAIDsが、胃粘膜を保護する物質の生成を阻害するからと言われています。これが思いのほか厄介で、軽ければ胃もたれ程度で済みますが、ひどくなると胃潰瘍や十二指腸潰瘍、つまり穴が開きます。穴が開くと、そこから出血します。そして出血多量で死に至るのです。これがNSAIDsによる死者の主な原因です。
他にある主な副作用としては、腎障害があります。腎臓が流れてくる血流の量を低下させる働きがあるので、それで腎機能が低下するのです。これで死に至るっていうのはなかなかありませんが、悪くなった腎臓が元に戻らないパターンもあるので、危ない副作用です。
他にも副作用はいっぱいありますが、胃潰瘍と腎障害が深刻です。
何が問題か?単純に薬の量が多いんです。非ステロイド系消炎鎮痛剤イブプロフェン、日本では1日600mgが限度となっています。アメリカは倍の1200mg。
基本的に痛み止めは、飲めば飲むほど副作用が起きやすくなります。上限設定からして、日本より多く服用していることになります。さらに別の理由があります。それが、日本とアメリカの医療保険の違いです。日本は、全員が何らかの医療保険に加入させられてます。
これを国民皆保険制度と言います。国民全員が保険に加入しているので、全員が医療を3割負担、あるいはもっと安い負担で受けることができます。しかしアメリカではそうといきません。アメリカでは、医療保険に加入している人は一部だけなのです。
2009年のニュースでは、15%の人が医療保険に加入していないとのこと。そしてこういう人たちは、貧困層が多い。
米国はトランプ大統領の就任2年目に当たる2018年に健康保険の未加入者の比率が10年ぶりに上昇する一方、家計所得はほとんど前年と変わらなかったことが、米国勢調査局が公表した年次調査で分かった。
昨年の健康保険未加入者は約2750万人、比率は8.5%で、未加入者が前年から約200万人増加し、比率も7.9%から上昇した。未加入者の比率が上昇したのはリーマン・ショック後のグレートリセッション(大不況)以来。健康保険は14年の医療保険制度改革法(オバマケア)施行以来、加入者の増加が続いていた。
未加入者が急増したのは例えばヒスパニック系住民の子どもたちや、収入が貧困水準を大幅に上回っているミドルクラス。地域的にはミシガンやオハイオなど大統領選の激戦州だった。メディケア(高齢者向け公的医療保険)の加入者数の比率は0.7%ポイント低下した。
保険に加入するお金がないってことです。
そのような人が医療を受けようとすると、高額な費用がかかります。もちろん貧困層の場合、そんなお金が出せません。病院に行くことができません。
その時に頼るのが、薬局、ドラッグストアです。こういう薬局やドラッグストアで買うお薬を、OTCと言います。アメリカは日本と比べて、OTCの割合が多いのです。
値段も日本の6分の1くらい。
需要があるため、市場原理が働きやすく入手できる状態です。保険がある人でも、病院にいかず薬局で済ます状態になります。医師の診断を受けずに薬で、済ます場合には正しく利用しない人が多いです。
アメリカの映画を見ていると、薬やサプリを適当に飲むシーンがよく描写されています。数量なんて関係ない感じで飲んでいきます。日本の倍の成分で、薬局で安く売られている薬を適当に飲めば死者も増加するのは必然です。
アメリカの医療費が高い“裏事情”
アメリカの医療費は高いですが、医療費が高くなることにも理由があります。オバマケアの登場には、アメリカの法外な医療費が大きな理由です。救急車を呼んで病院に運ばれるだけで数十万円かかるといわれています。民間の保険に加入していても、高額な医療費を払わされます。その最大の理由は、各医療機関が値段設定を自由にできるからです。ここが日本とは大きく異なります。
日本の医師の倍以上!超高収入の米医師
医療ビジネスによって、アメリカの医師の給料はほかの国に比べても圧倒的に高いのです。先進国の医師の平均年収は大体900万〜1,600万円くらいなのですが、アメリカの医師になると約2,200万円以上になります。これは先進国のなかでもっとも高く、日本の医師の倍以上といわれています。
日本は病気の種類や治療による料金を国が定めていますが、アメリカにはそのような固定価格はありません。ですから、病院側が自由に値段を設定しているのです。つまり個々の病院、医療が「ビジネス化」しているのです。
学費・研究費も高いアメリカ…その“ツケ”が医療費の高さに
アメリカの大学の学費は世界トップクラスの高さです。これは教育機関も医療機関と同じように「ビジネス化」していることが主な要因です。このビジネス化が値段設定における原点といっても過言ではありません。アメリカの大学の医学部の学費は超高額です。借金をしてでも教育を受ける人は珍しくありません。ですからその後のこともあり、必然的に高い給料ではないと、仕事としてやっていけないという事情がある。
アメリカの医療技術は世界でもトップクラスです。それを支えているのは、医療機関による研究投資が莫大な金額を投じているからです。いうまでもなく、その負担はかなりのものです。
新たな治療法、技術、医薬品の開発など、研究費にかける費用はとても大きく、その負担が個人の高い医療費に繋がっているといってもよいでしょう。つまり、医療開発費のツケが一般医療費に回って来ているといっても過言ではないのです。
「医療訴訟」に備えている側面も
アメリカのニュースや情報、あるいは映画やドラマなどで裁判のシーンがよくみられます。また、訴訟が起きたという情報をよく耳にすると思います。マイケル・ジャクソンが亡くなったときにも、いろいろと見受けられました。ご存知のとおり、アメリカは訴訟社会なのです。
日本とは比べものにならないくらい、アメリカでは頻繁に人を訴えます。なかには、「えっ、こんなことで」というようなものもあります。当然のごとく医療の現場でも、このようなことが頻繁に起こり、命に関わることですから、訴訟になったときに発生する金額も大変なものです。
万が一の医療ミスなどに備えて、「弁護士費用」を考慮した高い医療費を取っているといっても過言ではありません。医師側は訴訟が怖いのです。ですから、過剰なサービスや治療を施して、訴訟の発生を避けていることも珍しくないのです。訴訟を起こされて廃業した医師も少なくありません。医師の方々も必死なのです。
少し違いますが、この鎮痛剤の問題よりも、より麻薬に近い「フェンタニル中毒」が社会問題化しています。
米国の18歳俳優タイラー・サンダースさんが麻薬性鎮痛剤であるフェンタニル中毒で死亡したことが分かった。米国の人気ドラマ『ウォーキング・デッド』のスピンオフシリーズに出演した俳優。
2022年12月31日、米芸能専門メディアTMZとNBC放送などによると、ロサンゼルス(LA)郡検視官はサンダースさんがフェンタニル過剰服用のために死亡したと結論付けた。
フェンタニルは猛毒性麻薬だ。医療用として使われる時も徹底した管理が必要な薬物。苦痛の激しいがん患者などのために作られた。中毒性がヘロインの50倍、モルヒネの100倍に達するフェンタニルは、他の麻薬と混合して流通する。
サンダースさんは2022年6月16日、ロサンゼルスのマンションで遺体で発見された。ロサンゼルス当局の解剖結果、サンダースさんの遺体からは強力な薬物反応が出た。
検視官は報告書でサンダースさんが死亡前日に友達にフェンタニルを飲んだというメールを送り、彼の自宅では白い薬物粉と吸入道具などが発見された。サンダースさんはフェンタニル以外にも各種麻薬を使用した前歴がある。
故人の両親は声明で「社会に蔓延しているこの問題(フェンタニル乱用)に対する議論を進展させるためにサンダースの話を共有することにした」として「サンダースは精神健康問題を克服しようとしたが、社会的に楽しさを追求する方法ではなく麻薬に陥った」と明らかにした。
続いて「フェンタニル中毒問題で子どもを失うことになり辛い。このようなことがわが家族に起きるとは決して思わなかった」として「私たちの話を通じて他の人を救うことができることを願う」と話した。
ゾンビストリート
有名になった動画ですが、違法麻薬ではなく、それより遥かに強力なフェンタニルだと言われます。麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイド。ヘロインやモルヒネの数十倍の強力な麻薬になる。
ペンシルベニア州フィラデルフィアで撮影された動画が世界中に衝撃を与えています。薬物依存症の人々が、まるでゾンビのように徘徊しているのです。
「ゾンビタウン」と呼ばれるケンジントン通りを徘徊する薬物依存症の人々。これが日常的な光景でありアメリカの深い闇を表している。
コメント