米国と中国の対立が目立ってきていますが、色々聞き慣れない言葉が出てきます。
サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は2023年4月27日、米国が中国との貿易を断絶していないとし、米中経済の「デカップリング」は模索していないと強調した。ブルッキングス研究所での講演で、米政権は中国が米技術を米国に対し使用することは望んでいないとしつつも、中国との経済関係を断つ考えはないとした。
デカップリング?「2つの効果を切り離す」事を意味する言葉で、経済、電力、農業など色々な側面で使われます。
もともとは電気回路に使用される用語です。
それぞれの増幅段の信号ループを完結させ、B電源およびアース回路を伝って他の増幅段との間で信号の干渉が起こらないようにするためのしくみで、多くの場合、B電源とアース間にコンデンサを挿入することで結合(カップリング)の分断を行うもの。
日本では2016年に電力自由化が行われましたが、マスコミなどで意識高い系のコメンテイターなどが多用しました。米国の州では制度化されていますが、日本ではデカップリング制度の導入は今のところ行われはいません。
従来のエネルギー料金制度では、エネルギー事業者の収入は「どれだけの量が売れたか」によって決まるため、エネルギーの節約や効率化対策は歓迎されません。省エネを行った事業者を救済するための補填制度のこと。
農業の分野では、農家に対する「直接的所得補償政策」として使われています。需要を超えて豊作になった場合、価格を維持するための調整金、補助金の類のことです。日本に当てはめると、お米の価格を維持するための減反奨励金といったところ。
経済に関する用語は他の分野から借用して、使用することはよくあることです。職場に横文字大好きの意識高い系の人がいると流行り言葉のようで厄介ですが、知識として面白かもしれません。
経済の学卒ですが、アダム・スミスなどをやり玉に挙げて「経済学は学問としての成り立ちが弱すぎる」と言っていた哲学の先生を思い出します。いろいろな体系をまたがるのが経済ですから、やも得ないところがあるのかもしれませんが。
経済的には、
2国間の経済や市場などが連動していないことを言います。先進国と新興国の非連動性を指しますが、言葉として広まったのは、サブプライム・ローン問題が深刻化したときのことです。
米国をはじめとする経済圏がダメージをうけ、景気減速が始まると、中国が内需を拡大させて、強引に高成長を維持、結果的に世界経済停滞せずに成長が続くという考え方。逆に新興国が契機が怪しくなると、先進国が下支えをする場合は「逆デカップリング」という。
米国では対中強硬派が多くなってきており、中国との対立を深めていますが、それとは裏腹に貿易事態は旺盛で、2022年には最高額を記録しています。完全な遮断は無理ですから、安全保障に係る機微な分野や技術、製品に絞ってのみデカップリングが行われる、との見方が主流になっています。
新興国との関係で見ると、中国の「一帯一路」構想、米国に対抗するための中華経済圏とでもいうべきものですが、債務漬けにした結果、スリランカ、ガーナなどデフォルト状態に陥っています。デカップリングを模索しないと明言している以上、米国は中国についた国には「積極的にはたすけない」と言っているようなものです。
中国が尻拭いをするしかありませんが、お金を使わせるのも過去の戦略としてありました。完全に冷戦の模様です。
コメント