バブル経済 チューリップ・バブルは無かった?

社会考察

世界最初の投機的取引による市場の崩壊は「チューリップ・バブル」と言われている。

世界初のバブル経済といわれますが、バブルという言葉は、120年後のイギリスで起こった南海泡沫事件で使われるようになります。根本的なことですが、本当に起きたのか?と言う疑問もある事柄です。

  • オランダ(ネーデルラント連邦共和国)において、オスマン帝国からもたらされたばかりであったチューリップ球根の価格が異常に高騰し、突然に下降した期間をいいます。ピーク時であった1637年3月には、1個当たり、熟練した職人の年収の10倍以上の価格で販売されるチューリップ球根も複数存在した。

    スペインとの独立戦争が収束し経済が活発化。社会に安定がもたらされると、嗜好品に目が向けられることは世の常です。富裕層の間で、オスマン帝国から持ち込まれた観賞植物としてチューリップが流行していました。

    チューリップは、球根にウイルスが感染することによって、突然変異しやすく、そのため美しい模様が入った花を付けることがあって、この模様をつけたチューリップは高値で取り引きされるようになりました。いわば博打の要素が伴います。新しい色をつけた場合、巨額の富をもたらします。

    今でいう、転売目的の輩がレア商品を求めて、朝から行列をつくっている感じです。

    球根を転売して一儲けしようと企む一般市民です。国中が投資ブームになります。さらに現物売買から先物取引になり、実体がない分、空売りのような状態となり、価格はさらに上昇し異常な値段になってしまいます。

    そこで、初めて気づきます。「大丈夫か?」この不安が市場に広がり始めました。

    1637年2月3日、突然に、球根の価格がピーク時の100分の1以下にまで下がり、オランダの経済が大混乱に陥った。

というのが定説です。

1841年、英国のジャーナリスト・チャールズ・マッケイによって著された『Extraordinary Popular Delusions and the Madness of Crowds(邦題:狂気とバブル―なぜ人は集団になると愚行に走るのか)』において、広く知られるようになった。

1980年代まで効率的市場仮説の支持者により、疑われることなく流布されてきた。投資家は破産し、オランダ経済は破壊的ダメージをあったと。しかし、現代の研究者の多くは、チューリップに対する熱狂はマッケイが記載したほど異常なものではなく、国全体ではなく、かなり小規模の投資組織、小さな市場による出来事なのではないか?と言われています。

マッケイの著書だと、貴族や富裕層に限らず、庶民までが参加し成金が増加。市民、農民、商人、漁師、従者、使用人、煙突掃除人や洗濯婦までもがチューリップに手を出した、といわれるが証明するデータがなさすぎて、かなり想像が入っているのでは?

2007年の論文(アン・ゴルガー)では、ピーク時においても、チューリップ取引は、ほぼ裕福な商人や熟練職人のみにより行われ、貴族はこれを行っていなかったことが明らかになっています。バブルに起因する経済の停滞は非常に限られたものであって、チューリップ市場における著名な買い手および売り手を多数特定し、バブル崩壊期に経済的な苦境に陥った者は僅かだという。

The Tulip Folly(1882年、ジャン=レオン・ジェローム画)

バブルの語源となった経済事案は、「南海泡沫事件(なんかいほうまつじけん)」です。

1720年にイギリス(グレートブリテン王国)で起こった投機ブームによる株価の急騰と暴落、およびそれに続く混乱を指すが、主に損害を蒙ったのはフランスであった。ロバート・ウォルポールがこの混乱を収拾、政治家として名をあげる契機となった。バブル経済の語源になった事件。

南海と言うのは会社の名前です。

イギリスの財政悪化を補うために、スペイン領西インド諸島との奴隷貿易を行うという目的で設立されます。奴隷を貿易して、その利潤を国の借金に返済に当てるスキームです。第三セクター、準国営企業という感じです。

しかし密貿易やスペインとの関係悪化・海難事故等の影響で本業の業績は改善せず、政府の国債を引き受けるどころか、南海会社の経営そのものも危うくなる。さらに、1718年には四カ国同盟(英・仏・蘭・墺)戦争が始まり、スペインとの貿易が途絶した。

経営的に追い込まれた南海会社は、1718年に富くじを発行し、大成功をおさめた。このことがきっかけで、南海会社は本業の貿易業だけでなく、金融事業にも参入していくことになった。中産階級が出来上がっており、行き場を求めている資金が市場にはだぶついているところに、南海会社の株式が上場されます。

政府は公債引受と額面取引を条件にコントロールできると許可を出しますが、額面1株100㍀から1年で1000㍀、10倍になります。それに釣られる形で、イングランド銀行や東インド会社などの株価も上昇、さらに、金儲けを企む強欲な人たちが、許可制であったにも関わらず、利ざや目的の無許可の会社を乱立してしまいます。前産業革命ですから、発展する会社に紛れてるかたちです。

政府は規制に乗り出し、1719年6月24日「泡沫会社規制法」、8月24日には「告知令状」を出すと株式市場は沈静化に向かっていった。そして、株式市場は、あらゆる会社の株価が大暴落するという大恐慌に陥った。

日本のバブル崩壊も、政府が金融機関に「総量規制」がきっかけで崩壊しますから、この辺になると現代と類似しますが、オランダのチューリップ・バブルは、崩壊の過程がかなり曖昧で、その後の処理もよくわかっていません。

この時代生きた「万有引力」を発見したニュートンも相当な損失を被っています。株式市場は乱舞狂乱していましたから、判断が鈍った取引をしてしまいます。

早めに南海会社の株式を手に入れ、高い利益を確定します。まだ上がると判断して、さらに買い直します。そこが天井でした。いわば「つかんでしまう」わけですが、さらに不慣れな株式投資家のようなことをしてしまいます。下落中の株式も買い増しします。つかんだ天井の損失を穏やかにするための買い増しですが、結果は損失は膨らみます。現在の貨幣換算で5億前後と言われます。

天才科学者ですら、相場を読み切ることはできなかった!ということなんですが、天才らしくかなり問題があった人のようです。性格は短気・癇癪をもち、怒りっぽく、他人に対する復讐心や懐疑的な見方が強く、自身の発見や論文を巡る様々なライバルとの争いにおいて、妨害なども盛んに行ったといいます。

難解な惑星運動法則を解明した功績は疑う余地がありませんが、他人の感情など理解することができず、コミュニケーションが上手くできず、人間的な魅力には欠けていました。

『チューリップ・フィーバー』2017年作品

この話題に興味を持ったのは、映画を見たからですが、バブル経済とかニュートンはできません。ラブストーリです。配信で見ました。米国ではザ・ワインスタイン・カンパニーの配給。長年のセクハラ疑惑で、懲役16年の実刑が確定した大物プロデューサー・ワインスタインの最後の作品と言われます。

絵画のような映像で描く道ならぬ恋

チューリップの球根が投機の対象となり、“チューリップバブル”に沸いていた、17世紀のオランダ、アムステルダム。初老を迎えた豪商の若く美しい妻が貧しくも才能あふれる肖像画家と出会い、運命的な恋に落ちる。

『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』で知られるデボラ・モガーの原作を、『エクス・マキナ』などでスターダムを駆けのぼったアリシア・ヴィキャンデルと、デイン・デハーンの共演で映画化。絵画のような陰影あふれる映像で、道ならぬ恋を官能的に描く。

過激な内容からアメリカでのテレビ放送が禁止された予告編でも注目を浴びた。内容が過激するとテレビで自主規制がかけられた。放送禁止となったのは通常の予告編よりも過激な描写や表現などが多く含まれる「レッド・バンド・トレーラー」と言われるもので、絵画的な美しさをまとった本作の官能シーンも多く使用されていた。

本作はもともと4,800万ドルの予算で2004年に企画されたもの。当初は、ジュード・ロウ、キーラ・ナイトレイ、ジム・ブロードベントが出演、ジョン・マッデンが監督、スティーヴン・スピルバーグとドリームワークスが製作を務める予定だった。しかし、イギリスの税制変更が映画製作に影響を与え、撮影開始のスケジュール変更が発生し、それ以降製作が休止していた。

2014年、ワインスタインと提携し、パラマウント映画から権利を取得すると、製作を再開した。

興行的には大失敗作品。

制作費2,500万ドルだったが、興行収入は830万ドルで終了し大きな赤字を計上する。過激な予告CMで話題を読んだが、完全な肩透かし作品となってしまった。批評家も厳しく、毒く創生内物語に、贅沢に作られた時代劇といった辛辣な批評が相次ぎ、平均点以下の作品。

時代をつくったハーベイ・ワインスタインの断末魔としてみるのはいいかも知れません。折しも裁判が確定して、懲役16年の禁錮刑がくだされました。年齢的にも刑務所で最後を迎えるかも知れませんが、米国の懲役年数は、途中で大幅に減刑されます。歩くのも不自由なようですから、ホテルのような自宅で軟禁で刑期を送るかも知れません。刑務所の収監はないんじゃないかな?

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