日本酒は少し前まで嫌われていました。焼酎のように汎用性がなく、悪酔いするので、酒飲みからも敬遠される傾向が続きています。若年層にいたっては、ただでさえ飲まなくなったアルコールですから、日本酒は高いハードルです。
私は川崎市川崎区大師の育ちです。魚屋さんの隣には、ワンカップ片手にマグロのぶつをあてに、おじさんたちが楽しそうに飲んでいる光景が日常でした。立ち飲み屋、焼き鳥屋、おでん屋もありましたが、祖父は、ここでは日本酒は飲まなかった記憶です。理由は不明です。
日本酒にがんの抑制効果がある。という話題ですが、農業作物にも言えることですが、生産が落ち込んでいる商品に、なんとか健康効果を探って、ネガティブなイメージを払拭させようという意図も感じられます。
ワインにそういったイメージがあるため、生産地の秋田県が頑張っている感じです。マーケティング的には優秀だと思いますけど。話半分というところでしょう。
私の祖父は、73歳のとき食道がんで鬼籍に入っています。日本酒は好きでしたが、量は少なかったと思います。お酒が飲めない体質なのに、周りに合わせて飲む。飲まなければ、一人前の男と扱われなかった時代でした。
「練習すれば飲めるようになる」という価値観は、昭和ではあたりまでしたからね。私も父も下戸体質です。体質改善なんてアルコールに限ってはありません。病気になるだけです。
日本酒の発がん予防効果
食の多様化、欧米化に連動するかのように、この50年で日本人の食生活は大きく変化しました。それに伴い、アルコール飲料の消費量は減少し、中でも日本酒は顕著です。1973年のピーク時には176万kLあった課税移出数量が2013年には58万kLと約3分の1にまで減少しています。
お酒好きの人は肝硬変や肝がんになりやすい、とよくいわれます。しかし、もともと日本の肝硬変死亡率は世界のうちでも低いほうです。欧米では肝硬変の原因の80%がアルコールとされていますが、日本でのおもな原因はC型肝炎ウイルスで、アルコールに起因するのは10%程度にすぎません。
1966~1982年の16年にわたり、当時の国立がんセンター研究所が行った追跡調査(全国6府県24保健所管内の40歳以上の健康者約26万5000人を対象)では、適量のお酒を飲む人のがん死亡率が低下することが明らかになっています。
それによれば、毎日喫煙、飲酒、肉類を摂り、しかも毎日緑黄色野菜を摂らない群が、各種がんの最高リスクを示しています。ところが、このうちお酒の量が比較的多い40~54歳に限ってみると、飲まない人に比べて肺がん、肝がん、胃がん、大腸がんの死亡リスクはむしろ低いことがわかったのです(ただし喉頭がんと食道がんは飲酒者で高い)。
また文部科学省特定領域研究「発がん要因の評価に関する研究」でも同様の結果を見いだしています。約12万6000人(40~79歳)を10年間(1992~2002)追跡調査したところ、追跡開始後5年目までの成績は、飲酒者の全がん、肝臓がん・肝内胆管がん、胃がん、肺がんの各死亡率が非飲酒者や禁酒者より明らかに低く、7年目でも同様な傾向が示されました。
こうした疫学的研究の成果に照らして、滝澤教授らは、日本酒のがん抑制効果を確かめる実験を試みました。その結果、日本酒に多く含まれる微量物質が、ヒトのがん細胞の増殖を抑制することがわかったのです。
実験ではまず秋田県の日本酒100mLを2.5mLに減圧濃縮した試料をつくり、これを5段階の濃度に調製しました。そして、これらの試料を膀胱がん、前立腺がん、子官がんの各細胞を加えて24時間培養し、がん細胞の変化を観察しました。
その結果は、64倍に薄めた試料ではがん細胞を90%以上、128倍希釈した試料では50%萎縮あるいは死滅(壊死)させました。その効果は日本酒試料の濃度に比例しています。
またウイスキーとブランデーでも同様の実験が行われていますが、同じようながん増殖抑制効果は認められていません。
動脈硬化が進行すると、血管に血のかたまりができて、虚血性心疾患などさまざまな症状があらわれます。この動脈硬化は血液中の脂肪の一種であるコレステロール値が多くなることによって促進されます。
コレステロールには善玉(HDLコレステロール)と悪玉(LDLコレステロール)があることは認識されていますが、バランスが崩れて悪玉が増えると動脈硬化が起こりやすくなります。日本酒は善玉コレステロールを増やすことが明らかになっています。
また、血液を固まりにくくする働きを持つウロキナーゼを増やし、逆に固まりやすくするトロボキサンチンA2という物質を減らす効果が認められています。
日本酒が嫌われる3つの理由
若年層を中心に日本酒離れが進んでいる。日本酒が好きな人でも、飲む頻度は減少傾向にある。若年層は日本酒に限らず、酒全般を苦手にしている人が増えているよう。
日本酒とは必ず米を使い、「こす」という行程を入れなければならない。税法上、酒類は分類されていて、「清酒」は一般的な日本酒を指す。国税庁によると、2005年度に成人1人あたりの清酒消費量は、1位が新潟県、2位が秋田県だった。
清酒の国内出荷量は2003年、約半世紀ぶりに焼酎に抜かれた。その要因は「若者の清酒離れ」が進んでいるためとも言われている。秋田銀行の秋田経済研究所の調査によると、清酒が好きな人は38.9%だったが、飲む頻度は月に3回以下が71.9%にも達した。
清酒を飲まない人の主な理由は、「悪酔いや二日酔いをすること」「味」「匂い」で、清酒に飲みやすさを求めている。秋田経済研究所は「若年層の清酒アンケート調査」を実施した。
秋田県内に在住する20~34歳を対象に768人が回答、調査時期は6月。年齢層が下がるにつれ、清酒を飲んだことがない人が増加。
これまで清酒を飲んだことがあると回答した人は92.2%で、2002年に行った調査と比べ4.3ポイント低下した。年齢層別では、清酒を飲んだことがある割合は、20~24歳で85.0%、25~29歳で91.6%、30~34歳で98.5%。年齢層が下がるにつれ、清酒を飲んだことがない人が多いという結果が出た。
前回調査では20~24歳で94.3%、飲んだことがない人が9.3ポイント増えており、若者の清酒離れがうかがえた。
清酒を飲んだことがある人に、清酒が好きかどうかを聞いたところ、「好き」38.9%、「どちらとも言えない」31.9%、「好きではない」29.1%。前回の調査と比べ、好きが3.0ポイント減、どちらとも言えないが1.1ポイント減、一方で好きではないは3.9ポイント増えている。
清酒を好きと回答した人の飲む頻度は、月に1~3回が最も多く46.2%、年数回が25.3%、週1~2回が17.2%、週に3~4回が6.2%、週5回以上が4.0%だった。週1回以上飲む人は27.4%、月に3回以下(全く飲まないを含む)は71.9%となり、清酒が好きな人でも飲む頻度が低いことが明らかになった。
若年層の間で酒類離れが進んでいる
清酒を飲んだことはあるものの、「好きではない」「どちらとも言えない」と回答した人が、清酒を好まない理由を3つ挙げた。それは「悪酔いや二日酔いをするから」45.1%、「味」36.7%、「匂い」35.0%だった。
年齢層が下がるにつれ、酒類全般が苦手とする割合は増えていて「若者の間では清酒に限らず酒類離れが進んでいることが推測できる」としている。若年層が清酒を飲むようになるには、「清酒を飲みやすくしてほしい」という意見が目立った。
飲みやすい飲料として具体的には「チューハイやカクテル」が多く、「清酒を敬遠する人は、果汁を使用した低アルコール飲料を飲みなれているため、清酒に抵抗感がある」(同)と指摘している。
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