米SVB銀破綻 クレディスイス危機 利上げ副作用

社会考察

クレディ・スイスあたりの銀行から信用不安が始まると思っていましたが、依憑を付く形で、米国の大手銀行が破綻しました。感じなかっただけかも知れませんが、気配もなんにもありませんでした。

米シリコンバレー銀行が経営破綻

米連邦預金保険公社(FDIC)は2023年3月10日、米SVBファイナンシャル・グループ傘下のシリコンバレー銀行(カリフォルニア州)が経営破綻したと発表した。米メディアによれば、資産規模は全米16位で、2008年のリーマン・ショック以降で最大の米銀破綻となる。

テック企業が集積するシリコンバレーなどのスタートアップ(新興企業)を主な貸出先とし、2022年末の総資産は2090億ドル(約28兆円)。日本でいうと地方銀行トップのふくおかファイナンシャルグループに匹敵する。

2016年6月30日時点でシリコンバレーにおける預金量の25.9%のシェアを保持していたため最大のスタートアップ、ベンチャーキャピタル支援銀行でした。

米連邦準備制度理事会(FRB)の急速な利上げによって取引先の新興企業の資金繰りが悪化し、預金引き出しが加速したことで預金額が減少した。保有する有価証券の含み損も発生し、市場からの信用不安を招いた。

イエレン米財務長官は、シリコンバレー銀を巡りFDICやFRBの幹部らと会談した。イエレン氏は声明で「銀行規制当局が適切な対応を取ることに全幅の信頼を寄せている。銀行システムは依然として弾力的だ」と強調した。

特殊な商業銀行ではあるが、市場では不安が広がる。FRBは利上げを続ける必要があり、同規模の金融破綻が起きる可能性も指摘される。

クレディ・スイス

こちらは、米の破綻したシリコンバレー銀行等は違い、名門かつ世界で活躍している知名度の高い金融機関です。富裕層銀行・プライベートバンクとして知られています。

クレディ・スイスの長年の大株主だった米運用会社ハリス・アソシエイツが、この数ヶ月で全株式を売却、手放したとメディアが報じている。ロイターの報道によると、ハリスは2022年8月にはクレディ・スイス株の10%を保有していたが、2023年1月には5%へと保有割合を徐々に減らしていた。

市場は売却報道でクレディ・スイスの関連まで、大幅下落となっている。2023年2月に発表された2022年12月期の連結決算は、最終損益が約73億スイスフラン(約1兆円)の赤字となり、経営不安がくすぶり続けている。

2022年10月に顧客情報流出問題で、危機説が囁かれたが、再燃する形になっている。クレディ・スイス債のCDS(クレディット・デフォルト・スワップ)の保証料率が上昇するという事態があった。同時期にはSNS発信で広まり、高水準で資金が引き出されるいわゆる“取り付け騒ぎ“もあった。

2008年のリーマンショックのときも、前年にサブプライムローンの取り付け騒ぎがあったため、同様の連鎖的な破綻が警戒されている。

こちらも米FRBの急速な利上げが影響しているが、規模が大きい銀行のため、破綻したシリコンバーレー銀行のような突然死はないと思われる。巨額損失を出しても自己資本に余裕があるとみられ、すぐに破綻とはならない。利上げが一服すれば、反転する可能性もある。

クレディ・スイスは今後リストラに着手せざるはずだが、損失を出した投資銀行部門には3分割案なども囁かれている。米FRBの利上げが落ち着かないと買い手がいないかも知れません。

最悪のシナリオは破たんですが、リーマンショックのような広がりはないにしても、欧州金融は打撃を受けることは避けられず、米国の利上げにも影響を与える可能性は高い。欧州の銀行は、いくつか不安説がある銀行の名前が上がっていて、盤石ではない。

原因は、米FRBの利上げの一点。世界の金融機関もせざる得ない状況を救済策として、とめるか?続けるか?駄目な銀行に配慮はしないかもいれないが、イエレンさんは、システムを壊すようなことはしないかな。金融関係の株を少し持っているので、ちょっと心配です。

ユダヤ人を利用して地位を確立したスイス銀行

スイスがプライベートバンクの大国になった理由は1815年のウィーン議定書までさかのぼる。ウィーン議定書によりスイスは中立国としての立場を明確にしました。これにより大国からの影響を排除することができました。

スイスの銀行が発展は、フランスの富裕層の資産を隠し、タックスヘイブンとしての機能したからです。1901年、フランス等で相続税が導入されます。その機会に飛びついて外国資本を呼び込み、フランスの富裕層を惹きつけました。

フランス政府にとっては、税金逃れ、資本逃避に貢献しているとして強行手段に出ます。警察を動員して、1932年にスイス銀行のパリ支店に強制捜査として踏み込んだ。すると押収したデータから数百人のフランスの富裕層がスイスに秘密口座を持っていることが発覚。スイスの銀行業界はこの件に対し激怒し、銀行機密を厳しくすることで報復しようと働きかけた。

これにより、1934年のスイス銀行法により口座名義人の情報を第三者に開示することを禁止する法律ができました。これによりスイスのプライベートバンクは他国からの情報開示を法律を盾に拒否することができ、強固な「秘密銀行」としての立場を確立していきました。

ナチスドイツが台頭すると、ユダヤ人を差別し迫害します。それに伴い、ドイツのユダヤ人の多くは、資産の一部を守るために資金をスイスの口座に、貴重品をスイスの貸金庫に預けた。

ナチスドイツが中欧や東欧に侵攻してくると、これらの地域に住むユダヤ人も同様に資産を預けた。ところがスイス銀行は、ドイツの政府関係者の資産や彼らがユダヤ人から略奪した金や貴重品をも預かっており、被害者からも加害者からも利益を得ていた。

実際に第二次世界戦後、スイス銀行は守秘義務を理由に、ホロコーストの犠牲者が所有する休眠口座の詳細を公開することに応じず資産を遺族に返却しなかったことが後に問題となった。

スイスの秘密銀行の法律は世界的な資金の流動性の高まりとマネーロンダリングの対策により廃止することになりました。スイスの秘密銀行は身元の確かな資金を集めていた20世紀初頭までは問題ありませんでした。

しかし徐々に国際的な資金移動が高まってきた21世紀においては身元の不確かな資金を受け入れることも増え、透明性の確保の圧力に耐えることができませんでした。

2013年の米国により制定された外国口座税務コンプライアンス法、通称FATCA法はアメリカ国籍の人間の口座を開いた場合、米当局に情報を開示する義務を課しました。当然アメリカの法律ですのでスイスは直接影響を受けないはずですが、スイスの銀行の米国にある資金の凍結を示唆するなど、基軸通貨のドルを人質にスイスは法律を改定することとなりました。

FATCA法制定により、スイスの銀行は大きなダメージを受け、反対に米国の銀行にとってはアメリカ人の資金を取り込むチャンスとなりました。

その後OECD加盟国はFATCA法に倣って共通報告基準(CRS)を制定し、海外の銀行口座情報を共有する仕組みが出来上がりました。そのため、すでにスイスの秘密銀行としての役割は終わったと考えられます。しかしマネーロンダリングのリスクはスイス系プライベートバンクには残っており、2022年にはクレディスイスが資金洗浄の疑いで訴追されています。

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