欧州金融危機 経営学履修ノート。

経済

2009年秋,ギリシアの財政赤字の危機的実態が判明し,欧州の単一通貨ユーロの信用が一気に低下した。ギリシアの国家財政が破綻し,債務不履行(デフォルト)となる不安から,ギリシア国債が暴落し,ユーロ下落,世界の株価の下落が起こった。続いて2010年にはアイルランドが財政破綻し,高い財政赤字比率を抱えたポルトガル,スペインに不安が拡大,2007年の世界金融危機の再来が強く懸念された。

さらに2011年にはイタリアがIMFの監視下に入るなど,ユーロによる通貨統合を基礎に拡大してきたEUの基盤そのものが失われかねない危機が続いている。2013年には,キプロスが危機的状況に陥った。EUIMFは域内最強の資金力を持つドイツを中心に,ギリシアの救済・支援策を決め,ギリシアをはじめ各国に強く財政緊縮を求め,EU・欧州中央銀行・IMFのトロイカ体制で,各国の緊縮政策の実施プロセスの監査を強め,危機を食い止めようとしている。

しかし,危機に陥っている各国とも国内に高い失業率を抱え,公務員の削減,公的年金の加給年齢の引き上げなどを含む緊縮財政は社会不安を増大させることは必至である。緊縮政策だけでなく成長戦略を絡めて国内を説得する方向に動いており,各国政府がどのように実効性のある対策を打ち出すことができるか,予断を許さない状況が続いた。2013年後半には各国の財政改革は次第に軌道に乗りつつあり,ユーロ危機は一段落したという見方も出されるようになった。しかし,2014年3月に起こったウクライナの政治的危機が再びEU経済の大きな不安定要素となる可能性が出てきた。破綻しているウクライナ経済をEUがどのように支援するか,政治的危機とともにEU経済は依然として予断を許さない状況が続くことになる。さらに2015年1月,ギリシアにEUに対し緊縮策の見直しを迫るツィプラス政権が誕生,再び危機的な焦点となっている。

欧州債務危機は「火薬庫」、リーマンショック規模の影響も

危機的な状況は世界的な金融恐慌一歩手前まで進行。ショックは実体経済に波及し、貿易量が急減した。結果として日本の実質国内総生産(GDP)は08年10─12月期が前期比マイナス13.5%、09年1─3月期が同マイナス14.2%と、G7諸国の中で最も打撃を受けた。

安住淳財務相は6日の会見で、欧州では「財務・金融問題の負の連鎖が、景気の先行き不安をもたらしている」と警戒感を示した。だが、問題は欧州景気の減速ではなく、欧州債務危機をトリガーにして世界的な経済危機へと発展しかねない危い状況であるとの認識だ。これから編成する2011年度第3次補正予算案では、円高対策が盛り込まれる方向だが、単なる円高対策ではなく、仮に世界経済が大波に洗われても、迅速に対応できるような予算措置を予め講じておく必要がある。

民間企業も、ソブリン危機は実体経済から距離があると油断していると、リーマンショック後のように狼狽するところが続出するだろう。今から需要減退シナリオの実現可能性を引き上げ、綿密な危機対応計画を練っておくべきだ。今回の欧州をめぐる危機への緊張度の高まりは、地震のように前触れなく突然やってくるパターンではなく、台風のように予め進路や被害が予見できる。仮に大きな打撃が出そうになった場合、被害を最小に抑制できるかどうかは、政府や企業のトップによる入念な危機対応計画の立案と果断な判断だと思う。その前に、ドイツをはじめ欧州各国が、危機を拡大させるようなトリガーを引かないよう最善を尽くす展開になることを切望する。2011096

スペイン、支援要請へ=銀行の特別検査受け

欧州連合(EU)ユーロ圏諸国は21日の財務相会合で、スペインの銀行の資本増強に必要な金融支援を協議し、同国は25日までに支援を要請する見通しとなった。フランスのモスコビシ財務相は会合後、スペインは22日に支援を正式要請すると語った。ユーロ圏は9日、最大1000億ユーロ(約10兆円)のスペイン支援で合意。今後は支援実行に向けて詳細を詰める作業を急ぐ。21日の会合でスペインは、銀行のストレステスト(特別検査)で資本不足額が最大620億ユーロに上ったことを説明。ユーロ圏は支援内容や条件をめぐり同国と本格的な交渉を週明けに開始し、7月9日までに支援の大枠を固める。2012622

ドイツ除くユーロ国全部危ない  欧州国債「ドミノ倒し」の深刻

ギリシャに端を発した欧州の財政危機は、イタリア、スペインと「ドミノ倒し」の様相を呈してきた。イタリア国債の金利が「危険水域」といわれる7%を超え、スペインもそれに迫っている。欧州の財政危機が拡大していることで、市場では「次に危ない国はどこか」と、探り合いが始まっている。

「ラテン系」というだけで投資家が疑心暗鬼

スペインが20111117日実施した10年物国債の落札利回りは年6.975%まで上昇した。入札に、買い手が十分に集まらなかったことが原因だ。国債の応札倍率は、10月の1.76倍を下回る1.54倍と低調。また、すでに発行されている国債利回りは一時、年6.8%台に上昇(価格は下落)した。ロイター通信によると、スペイン国債の水準はユーロ導入後最も高く、1997年以来14年ぶりの高水準という。ユーロ圏第3位の経済大国であるイタリアに続き、第4位のスペインにも財政危機が迫っていることになる。

スペインは20日に総選挙が行われ、最大野党の国民党が下院で単独過半数をとって与党の社会労働党に圧勝。7年ぶりの政権交代が決まった。国民党は財政再建の加速を掲げており、マーケットでのスペインの信用不安はひとまず和らぐことが期待されている。とはいえ、スペインは財政赤字が国内総生産(GDP)比で9.3%に達していて、ユーロ圏17か国の平均(6.2%)よりも財政状況が悪い。GDPに占める国の借金の割合は60%。失業率は22.6%で、ユーロ圏で最悪だ。財政再建が容易でないことはわかる。しかし、経済アナリストの小田切尚登氏は「GDP借金の割合はギリシャやイタリアに比べて少ない。財政改革も両国よりもうまくいっていた。それがマーケットの心理的要因でターゲットにされたようだ」と話す。「ラテン系というだけで、投資家が疑心暗鬼になっている面がある」と指摘する。欧州の国債売りが次々と飛び火して国債の金利が上昇。それによって債務国の利子負担の増加懸念が強まることで、さらに不安が高じて国債売りが加速する。これに財政不安に伴う内政混乱が加わって、これまでポルトガル、ギリシャ、イタリア、そしてスペインでも政権が交代することとなった。

フランスやオーストリア、ベルギーの国債も売られる

国際投信投資顧問の投資レポートによると、同社が先進国の国債などで運用する旗艦ファンド「グローバル・ソブリン・オープン」(通称、グロソブ)に組み込んでいたフランス、イタリアに続き、スペインとベルギーの国債を1117日までにすべて売却した。これはほんの一例でしかない。前出の小田切氏は「日米に英国と、いま世界の投資マネーが欧州から逃げている」と指摘。最近はフランスやオーストリア、ベルギーの国債も売られていて、金利はジワジワ上昇している。「いまの欧州危機の回避はドイツ次第という言い方もできるが、とにかく各国が協力して、一つにまとまれるかがカギ。その姿勢がなければ、短期的にはドイツを除く欧州すべてがターゲットにされて、金利上昇が起こる可能性がある」という。2011/11/21

野村HDに欧州危機直撃 関連会社の売却報道まで飛び出す

国内証券最大手の野村ホールディングス(HD)を、欧州危機が直撃している。201179月期連結損益が4609200万円の赤字になったことから、総額12億ドルを削減する大リストラ策に取り組む。欧州を中心に1000人もの人員削減や、野村不動産や野村総合研究所といった関連会社の売却報道まで飛び出し、1124日の同社株は年初来安値を更新し、一時223円まで下落した。市場では、経営環境が相当厳しいと受けとめられているようだ。

「買い叩かれるような売り方しないはず」

英フィナンシャル・タイムズ(FT)や、国内でも共同通信などが報じたところによると、野村HDは保有している野村不動産や野村総合研究所の売却の可能性を複数の大手プライベート・エクイティ・ファンド(PE)に打診。FTPE関係者の証言として「野村は証券業務と直接関係のないあらゆる業務について、あらゆる相手と協議している」と報じている。これに対し、野村HDは「憶測に基づいて書かれた記事で、コメントは差し控えさせていただきたい」としている。とはいえ、火のないところに煙は立たない。野村HD2008年秋、リーマン・ブラザーズの一部事業を買収し、海外拠点を大きく拡大したが、ギリシャ問題に端を発した欧州危機による景気の不透明感から株式市場が振るわず、買収効果が収益に結びつかない状態となっている。なかでも、欧州部門は経営の足を引っ張ってさえいて、79月期決算の発表時に明らかにされた8億ドルを削減する追加リストラ策も、欧州事業がそのうちの6割を占める。かなり厳しい経営状況に置かれているとみられる。その半面、野村不動産や野村総研は関連会社(持分法適用子会社)なので、「事業を売却しても本体へのコスト削減効果は薄い」との見方もある。まして、野村総研はもともと野村証券の調査部門が独立して設立。「歴史的な経緯が、投資目的で保有している株式とはワケが違う。たとえ売るにしても、買い叩かれるような売り方はしないはず」(市場関係者)という。

人員削減は1000人超、給与カットもあり得る

野村HDは、すでに7月に4億ドルのコスト削減策を発表。欧州を中心に300人程度の人員を削減した。これに8億ドルの削減策を追加して、総額12億ドルを削減する。8億ドルのうちの7割は人件費になる見込みで、もう一段の削減となる。野村HDは具体的な人数を明らかにしていないが、前回発表の削減規模と加えると、欧州を中心に1000人超の規模になるとみられる。野村HDの投資銀行業務やトレーディング業務などを行うホールセール(法人)部門の79月期決算は、税引き前損益で730億円の赤字となり、赤字幅は46月期より拡大していた。人員削減は欧州の法人部門を中心に実施し、欧州の経営資源をアジアや米州に再配分する考えで、「いまの欧州の経済環境にあわせた事業規模にする」と説明する。野村HDの全社員約35000人のうち、半数以上は日本にいる。人員削減は日本でも一部実施される見通しで、給与カットにも踏み込まざるを得ない状況だ。2011/11/26

イタリアはすでにリセッション入りした恐れ=フィッチ

格付け会社フィッチは17日、イタリアはすでにリセッション(景気後退)に陥っている可能性があり、ユーロ圏経済の悪化でモンティ新政権の課題がより困難になったと警告した。フィッチは声明で「失業が増加するなか、構造改革と緊縮財政策に対する政治的な支持、および国民の支持を維持することは難しくなる」と指摘。「改革が効果的に実施され、中期的に経済成長を後押しするということを投資家に納得させることは、同じくらい困難になる」とした。またイタリア国債利回りについて、現在の水準で推移し続けた場合、イタリアの債務は持続不可能となる水準まで上昇していると指摘。

2012年には総額1930億ユーロの国債償還が控えていることから、同国が市場から資金調達できる状況を保全することは「絶対に必要」との見方を示した。イタリアでは来年2月だけで360億ユーロの国債が償還を迎える。20111118

欧州危機の本質とは何か――ギリシャでもなく、イタリアでもない

欧州危機の本質は、ギリシャでもイタリアでもない。そして、損失拡大からの資本毀損による銀行の資本不足の危機でもない。ユーロという共通通貨の問題でもない。本質は銀行の存在そのものの危機であり、金融そのものの危機なのだ。ギリシャはEU、欧州経済にとっては、小さな存在である。規模からいってもそうだし、経済的に傑出した産業は、観光と海運ぐらいで、あまりない(国としての重要性とは別の議論であり、重要な国ではない、という意味ではない)

さらに、これまで、ギリシャ危機はさんざん言われてきたし、破綻するのは予想どおりだから、いまさら騒ぐことではない。ギリシャ以外のほとんどのまっとうな銀行はそれなりの手当てはしていたはずだ。それなのに、今、ギリシャの国内政治の動きに右往左往するのはおかしい。それがイタリア国債に波及するのもおかしい。イタリアはもともと政府の効率性、信頼性が低く、政治の多数の政党が乱立し不安定だった。したがって、財政赤字が膨らみやすく、実際にもそうだったから、何も新しいことがベルルスコーニによって起こされたわけではない。では、なぜ、ギリシャのデフォルトがイタリアに波及し、欧州全体の危機になるのか。改めて整理してみよう。10月末にEU首脳が集まって、金融危機への対応策をまとめた。包括戦略と呼ばれるこの対策は3つの柱からなる。

1が、ギリシャ財政破綻への対応で、ギリシャ国債を保有する民間投資家の負担を当初の21%から50%へと大幅に増加させ、ギリシャが今後財政を再建することが可能な水準まで債務水準を下げ、デフォルトを回避する。第2は、欧州金融安定基金(EFSF)の実質的な規模を1兆ユーロ(106兆円)規模へと拡大し、「今後、財政危機がスペイン、イタリアに波及すると欧州金融市場は崩壊する」という懸念の拡大を防止することを目指す。第3は、欧州の各銀行の資本増強をめざし、自己資本率の基準を9%に引き上げる。

これらの対策は、事前に議論されていたとおりのもので、3つのポイントを押さえ、規模もそれなりのものとなったので、一応評価され、一時的には(2日間)、欧州でも米国でも株価は大幅上昇となり、大幅下落していたユーロは反発した。その一方、「これでは不十分、もっと抜本的な解決策が求められる」という意見もあった。いちばん大きな理由は、「EFSF100兆円では足りないし、しかも、今回の規模の増大は外部から資金を借り入れることによるもので、レバレッジをかけるだけのことであり、本質的な規模増大になっていない」というものだ。

しかし、この両者の見方はどちらも間違っている。なぜなら、現在の欧州危機は解決できない危機であり、したがって、抜本的な解決策は存在しないからである。現在、一時的に安心感が広がり、暴落からの反動で、株価もユーロも多少戻しているが、今後、繰り返し、不安と安心の間で揺れ動き、そのたびに株価や為替が乱高下することになるだろう。なぜ解決できないか。まず、第1に今回の欧州危機は、財政危機ではなく、銀行危機であり、ギリシャは関係ないということである。それなのに、ギリシャ問題で銀行危機が起きてしまっている。ギリシャは、不良債権先の一つにすぎない。一般的に、多くの企業に融資していれば、1つぐらい悪い企業があって、それが倒産してしまうことはある。問題は、それだけで、銀行が危機になってしまうことだ。

銀行が危機だからということで、今回の対策の目玉となっているのが、銀行の資本増強である。しかし、実は資本増強だけでは足りない。日本の90年代の銀行危機を思い出してもらいたい。日本経済が回復したのは、資本注入によるものでも、その後の不良債権処理によるものでもない。2002年のりそなショック、つまり、りそなが公的資金を受け入れたことをきっかけに日本経済が浮上したと思われているが、それも違う。 実際には、アジア経済が急成長し、バブルぎみではあったが、多くの需要を日本経済にもたらしたからであった。企業は輸出を伸ばし、アジアへ進出した。アジアにとどまらず、東欧をはじめ世界中の新興国が大きく成長し、そが日本経済の回復につながった。

日本の銀行はこの流れに乗り、強くなった日本のグローバル製造業の海外進出に伴って、海外へ進出し、1980年以降失われていた、成長企業への融資モデルを再度確立した。つまり、日本の銀行危機が解決したのは、資本注入によるものでもなく、不良債権処理によるものでもなく、バブルに踊らされ、まともなビジネスモデルを失ってしまった金融機関が新しい健全なビジネスモデルを確立したためなのである。欧州の銀行は、かつては日本の商業銀行のモデルだったし、ごく最近まで日本は遅れていると思われていた。ところが、いつの間にか、彼らは単なる証券投資家に成り下がってしまっていた。企業の目利きも、融資による成長支援もできないし、やる気もなくなっていたのである。日本を見習って、欧州の銀行が原点回帰することが、欧州銀行危機を解決する抜本的な対策であり、これは政策対応ではなく、個別の銀行の努力にかかっている。1118()

旗艦ファンドの「グロソブ」、イタリア国債をすべて売却

国内最大の投資信託、「グローバル・ソブリン・オープン」(通称、グロソブ)を運用する国際投信投資顧問は、「グロゾブ」に組み込んでいたイタリア国債をすべて売却した。20111114日までに開示した週次の運用リポートで明らかにした。2日時点で3.7%だった保有比率が7日までにゼロになった。売却規模は約800億円とみられる。「グロソブ」は先進国などの国債で運用する国際投信投資顧問の旗艦ファンド。投資家に分配金を毎月支払うタイプを中心に合計で約21000億円を有する。欧州の国債に積極的に投資していたが、財政危機を受けて運用方針を見直した。すでにフランス国債も売却。ユーロ建て債券の保有比率は6月末の36%から20.5%に引き下げ、代わりに日本国債やオーストラリア国債の保有比率を高めている。2011/11/15

「すべてのソブリン債務危機の根源を語ろう」

民間金融機関が国家への融資を積極的に担うようになったのは1970年代以降のことだ。先鞭をつけたのはシティバンクで、当時のCEOウォルター・リストンが「国家は破産しない」と言い切ったのは有名な話だ。無責任な借り手がいれば、その相手方として、必ず無責任な貸し手がいる。繰り返されるソブリン債務危機のこの根本原因をどう解決すればよいのか。ノーベル賞経済学者のエドムンド・フェルプス コロンビア大学教授と金融システムに精通する気鋭の経営学者、アマル・ビデ タフツ大学教授が共同提言する。ギリシャ債務危機は、およそ想像を絶するレベルで欧州諸国の財政を統合しなければ、ユーロは存続できないのではないかという疑念を呼び起こした。

だが、もっと簡単な道はある。各国政府が国際信用市場で無責任な借金を重ねるとしたら、相手方として、無責任な貸し手がいるはずだ。銀行規制機関は、すでに監督下にある金融機関に対して、そういう融資をするなと言えばいいのだ。外国政府への融資は、無保証の民間債券やジャンク債への投資と比べても、多くの点で本質的にリスクが大きいと言える。民間の借り手は、多くの場合、住宅などの担保を提供しなければならない。

担保により貸し手側のダウンサイド・リスクは制限され、担保とした資産を手放す恐れから、借り手はより賢明に行動するようになる。だが、政府は担保を提供しない。それどころか、返済しようという主なインセンティブは国際信用市場を利用できなくなるのではないかという不安であり、それは困った借金癖から生まれるものだ。国内での課税や債券発行では歳出を常習的に賄えない政府は、海外からの巨額の借り入れを続けなければならない。その背景には、たいてい、深く根を張ったガバナンス不全(misgovernance)がある。

民間の債券は通常、債務者が無謀な賭けに出にくいようにする約定を伴っている。

融資・債券約定では、債務者が最低でも一定の基準の自己資本ないし現金資金を維持することに同意するよう義務づける場合が多い。これに対し、政府発行債券にはそのような約定は付随しない。同様に、民間の借り手が銀行融資を確保するために自らの財務状況について虚偽の表示をした場合には刑事罰を受ける可能性がある。証券関連法により、社債発行体は想定されるすべてのリスクを開示しなければならない。対照的に、ギリシャの混乱を見れば分るように、政府はとんでもない虚偽表示や詐欺まがいの会計処理をしても何のペナルティも受けない。

民間の借り手が債務不履行になると、破産裁判所が破産プロセス・企業再生プロセスを監督する。無保証の貸し手でさえ、なにがしかを回収する希望を持つことができる。だが国家については、清算プロセスや債務の再交渉を進めるための司法の場は存在しないのである。さらに悪いことに、国家が海外で起債した債券は、通常、その国家には管理できない通貨建てとなっている。つまり、通貨の価値を抑制することで債務負担を目に見えない形で徐々に減らしていくという選択肢はめったに使えないのだ。政府発行債券の安全性を高めるものとして想定されているのが課税権である。

これに対し、民間の借り手は返済義務を果たすために利益や賃金を稼ぐ権利を持っていない。とはいえ、課税権と言っても現実的制約がある。また外国の債権者に返済するために将来の世代の国民を拘束する倫理的・法的な権利が政府にあるか否かは問題である。したがって国家への融資には底知れないリスクが伴う。そのリスクは、どのような結果にも耐えるという意欲のある専門的なプレイヤーによって担われるべきものだ。歴史的に、国家への融資は少数の大胆な融資家の仕事であり、彼らは抜け目なく交渉を進め、政治を熟知していた。港湾や鉄道を担保にして(あるいは軍事力の利用により返済を確保して)政府に融資を行ったという例もないわけではない。

だが、1970年代以降、(民間金融機関は)国家への融資を積極的に担うようになった。先鞭をつけたのはシティバンクで(同行のCEOウォルター・リストンが「国家は破産しない」と言い切ったのは有名だ)、膨大なオイルマネーをいかがわしい国家体制へと環流させた。緩い条件で巨額の融資を受けた政府はときに債務不履行に陥るという些細な事柄を除けば、伝統的な融資活動よりもはるかに美味しいビジネスだった(一部の銀行は、ほとんどデューディリジェンスの手続きも取らないままで、巨額の金額を融資できた)。

その後バーゼル合意により、政府発行債券は実質的にリスクフリーであるとされたことで、銀行はより多くの政府発行債券に食指を動かすようになった。各銀行に求められる準備金の額はわずかであり、彼らはギリシャなどの比較的利回りの高い国債にどんどん投資を積み上げていった。だが、これらの債券の格付けは非常に高かったとはいえ、無保証かつ実質的に取り立て不可能な債権について、そもそも客観的な評価を下せる者などいるのだろうか。

銀行が各国政府に対して融資を行ったことは、二重の意味で災難だった。まず、過剰な貸し付けが、特に無責任で腐敗した政府を抱える国家に対して積み上がっていった。そして、リスクの大半を、(たとえばヘッジファンドではなく)決済システムの円滑化において中心的な役割を果たしている銀行が負うことになったために、国家債務危機が広範囲に及ぶ弊害をもたらす可能性が生じてしまった。ギリシャの混乱は、ギリシャ国民のみならず、欧州全体の幸福を脅かすことになったのである。

国家債務危機と銀行危機とのあいだの結び付きを断つソリューションは単純である。借り手の返済意欲・能力の評価が不十分であるような銀行融資は規制すればよい。これはつまり、国境を越えた国家債務(あるいは、債務担保証券などあまりにも複雑な金融商品)が生じないということを意味する。このシンプルなルールならば、欧州諸国の財政措置の複雑な再調整は必要ないし、新たな超国家的機関を創設する必要もない。政府による海外での借り入れが難しくなるのは確かだろうが、国民にとってそれは負担ではなく、良好な結果をもたらすだろう。

さらに、国際的信用市場への政府によるアクセスを制限することは(そしてその帰結として、より厳しい財政規律を促すことは)、現実的には、もっと積極的で生産的な借り手を支援することになる。こうした制約を導入しても、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペインといった国々における現在の危機を解決できるわけではない。だが、そろそろ欧州も世界全体も、弥縫策をあれこれとつまみ食いするのは止め、真の構造的問題に取り組むべきときである。

エドムンド・ストロザー・フェルプス(Edmund Strother Phelps
1933年生まれ。アメリカの経済学者。コロンビア大学経済学部教授。2006年、失業率とインフレの関係についての分析で、ノーベル経済学賞を単独授与された。

アマル・ビデ(Amar Bhide
マッキンゼーなどを経て、タフツ大学フレッチャー・スクールの教授。近著「
A Call for Judgement: Sensible Finance for a Dynamic Economy」は金融システムの問題点を詳細に分析し、政財界で高い評価を得た。

借りたもん勝ち…ギリシャ人が働かぬ理由

「もう少し働いたら?」。そう言うとギリシャやイタリアなど南欧の人たちには言いすぎかもしれないが、ギリシャからのニュースを扱うたびにそう思う。深刻な財政危機に陥り、欧州危機の震源地となったギリシャで、官民の2大労組の連合組織が1日、24時間のストライキを行った。ストは今年7度目。理由はどうあれ、借金まみれになった揚げ句、隣国から多額の融資を受けようとしている国にしては、多すぎる気がする。世界中の人がきっと迷惑がっているギリシャを少し分析してみると…。

観光大国の“ゆとり”

報道によると、ストに伴い、アテネで行われたデモには2万人が参加した。10月半ばに10万人以上が参加したデモに比べると、寂しい気はするものの、少なくはない数字だ。ストは政府機関や自治体、公立学校のほか、鉄道やフェリーなどの公共交通機関に及んだ。ギリシャでの一連の騒動と重なる出来事を思い出した。2004年のアテネ五輪の取材で、1カ月ほど滞在した。五輪のためのスタジアム建設などの資金がかさみ、財政悪化に拍車をかけたといわれている。騒動と重なったのは、野口みずき(現シスメックス、当時グローバリー所属)が金メダルを獲得した女子マラソンを取材したときのエピソードだ。

ゴールとなったのは近代五輪が初めて開かれたパナシナイコスタジアム。取材を終え、各国記者とプレスバスに乗りメーンスタジアムに戻る途中、バスの運転手が突然運転をやめた。通行止めでも、渋滞でもないし、車両にトラブルがあったわけでもない。急いで戻る理由があった。大会の華、男子百メートル決勝の取材のためだ。このままでは間に合わない。各国の記者は当然怒った。運転手に詰め寄り、半ば強制的に発車させた。止まった理由は運転調整だったか、指示がこないだったか。よく分からない理由で、結局取材に遅れてしまった。なぜか働かないギリシャ人と苛立つ欧米人。構図が一連の騒動と似ている。

10人に1人が公務員

ギリシャ騒動をおさらいしてみたい。09年10月にパパンドレウ前首相が国家財政の粉飾決算を暴露したのが始まりだった。01年にユーロを導入したギリシャは他国からの輸入が増え、経常赤字が拡大。前首相の暴露によって国際的な信用はさらに落ちてしまった。10年時点の政府債務が国内総生産(GDP)の1・5倍近い約3300億ユーロ(約34兆円)。一方で、全人口1100万人なのに、100万人もいるといわれる公務員の厚遇ぶりは顕著だ。公務員の年金・給与などの支出は政府支出の約4割を占める。年金額は退職直前賃金比95%にのぼるとされる。しかも国民の脱税行為も多いとか。もっとも国として借金を返すことはできず、頼ったのが隣人(国)だ。自らは返せないから、ユーロ圏諸国に「助けて」とお願いしたわけだ。ここまでみると、典型的な「ダメなヤツ」。ただ、それだけでは終わらなかった。

10月下旬のユーロ財務相会合では、ギリシャに対する80億ユーロ(約8300億円)の金融支援が承認された。借りられる手立てができたわけだが、すると前首相が突如、ユーロ圏の危機封じ策「包括戦略」の是非を問う国民投票構想を表明。ギリシャ政局は混迷した。ユーロ圏側は「信頼関係が損なわれた」と怒った。つまり、政治が「働かない」ことに腹を立て、融資を棚上げしたのだ。慌てたギリシャ側は、パパデモス首相率いる大連立政権発足させた。

ようやく落ち着いたかと思ったところで、今度は大規模ストって。いったいギリシャ人って何を考えているのだろうか。人口が約1億2千万人で議員定数732人の日本に対し、日本の10分の1の人口しかいないギリシャの国会議員数は300。多すぎる議員が自分たちの生活のために何もしてくれないと、国民が怒るのも分からないではない。それでも「借りたもん勝ち」「もらったもん勝ち」という姿勢をどこかに感じる。汗水流して、歯を食いしばって努力するより、もらえるものをもらえば、政治も、国民も働かなくなる。そんな気がしてならない。

アテネに行ってみて分かったのは、ギリシャが「豊かな国」ではないということだ。主産業は観光と海運業に、農業。確かにパルテノン神殿のような世界的な史跡が各所にあるのだから、努力したり、懸命に働く必要はないのかもしれない。何もしなくても知名度ゆえに年間1千万人以上も訪れるとされる観光で、世界からお金は集まるからだ。だからか、アテネ五輪取材で滞在中に「あんまり働かないなあ」と疑う例はいくつもあった。例えば、競技が行われるスタジアムに行くと、資材がずっと山積みになっていたり、工事道具が散乱していたり。舗装途中で土がむき出しになり、水たまりになっているところもたくさんあった。世界的なイベントなのに建設を途中でやめたとしか思えない個所は1つ、2つではなかった。まだある。宿泊先となったのは大学の寮ではドアの立て付けが悪く閉まらないし、開かない。疲れて部屋に戻ってきてシャワーを浴びようとすると、水しか出ない。用を足そうとトイレを使うと、紙が流れず、詰まった。ここも工事を途中でやめたり、適当に仕事をしただけなんじゃないかと疑ったりもした。

「もっと働いてください」なぜだか分からないけど働かないとの印象が強いギリシャ人。当時は「国民性なんだろうな」で済んだ。でも、世界に広がるかもしれない危機の震源地となれば別だ。これ以上、世界経済が悪化しないためにも、日本人の感覚から言えば、「ストなんかしないで、もっと働いてください」とお願いしたくなる。ところで、広辞苑をひくと、「働く」には「うごく」「精神が活動する」「精出して仕事をする」といった意味のほかに、「(悪いことを)する」という意味もある。悪事を働くなどの使い方をするが、唯一、ギリシャ人にとって「働く」というのがこの意味だけ、などとならぬように。2011.12.4

新興国、世界経済の救世主にはなれず

西側先進国が再びリセッション(景気後退)に陥っても、新興国が世界の救世主となることはできない。今や世界経済は密接に関わり合っており、デカップリングは神話だ。先進国が低成長からゼロ成長へとシフトする懸念が強まるなか、多くのエコノミストの目には、新興国市場が2008─09年の金融危機の時よりも優れた避難先と映っているようだ。これは普遍的に正しいとは言えない。インドは膨らんだ政府債務と高インフレで身動きがとれない。トルコの膨大な経常赤字は資金流出の懸念をはらみ、ブラジルも金利上昇による中間層の消費手控えで成長が鈍化している。 中国やインドネシアなどの底堅さは、西側のゼロあるいはマイナス成長の代わりというよりも、世界経済が北から南、西から東にシフトしている証拠と言える。

モルガン・スタンレーは、2011─12年の世界の経済成長の80%は新興国がもたらすと予想している。 香港のミラエ・アセット・セキュリティーズのグローバル・エコノミスト、ビル・ベルシェール氏は、アジアではついに内需促進策が実を結びつつあるとの見方を示しているまた香港の野村の首席アジアエコノミスト、ロブ・サバラマン氏も、欧米や日本への輸出の伸び悩みはアジアにとって逆風としながらも、アジア諸国の外需への依存は低下していると指摘した。

<注目は中国、アジア>フィッチは16日、サハラ以南のアフリカの経済見通しが過去数十年間なかったほど明るくなっている理由の1つとして、アジアの重要性が高まっていることを指摘した。アジアとの貿易は活発で、今のアフリカは以前ほど先進国の状況に左右されなくなっている。もちろん先進国がリセッションに陥り、輸出需要が落ち込めば、コモディティー価格や生産国に影響が及び、中国も無傷ではいられない。モルガン・スタンレーが18日に中南米地域の2012年成長率見通しを4.6%から3.6%に引き下げたのはこのためだ。懸念されるのは、多くの新興国で経済ファンダメンタルズが2008年より良好であるにもかかわらず、政策決定者に行動の余地があまりないことだ。

特にインドはそれが顕著で、2007年以降財政赤字は2倍以上に跳ね上がり、卸売物価は9%以上上昇した。2010年3月以降利上げが11回実施されているが、政府と中央銀行は今年度の成長率は少なくとも8%との見通しを変えていない。この見通しについて豪ウエストパックはリポートで、かなり難しいと指摘している。 中国はインフレと銀行の不良債権問題が悩みの種だが、まだ緩和政策の余地があると言える。現在21.5%というとてともなく高い銀行預金準備率の引き下げが選択肢の1つと言えるが、政府支出を増やすことも可能だ。スタンダード・チャータード銀行(上海)の中国調査部門の責任者、スティーブン・グリーン氏は「今は2008年よりも国内外の需要の大幅減少に対応する政策の余地が少ないが、適切な措置が依然として可能だ」と指摘した。

<魔法の処方箋はなし>キャピタル・エコノミクスは、中国が緩和政策に動くなら、主に恩恵を受けるのは先進工業国ではなく資源国とみている。2008年の中国の巨額の景気刺激策は2007─09年の米国と欧州に対する貿易黒字をそれぞれ190億ドル、260億ドル縮小させたにすぎない。新興国の急速な成長が先進国を救うには、中国や産油国からの輸入が大幅に増え、対外黒字が縮小することが必要となる。しかしキャピタル・エコノミクスのアナリスト、ニール・シェアリング氏によると、実際には2011年の新興国の経常黒字は増加し、高水準を維持するとみられている。同氏はリサーチノートで「言い換えれば、先進国を救うどころか、新興国は他の国々の需要の足かせになりつつある」と指摘した。20110819

財政危機のスペインに 投資銀行が群がる「理由」

欧州危機が深刻化するなか、財政赤字の大きさが不安視されているスペインに、投資銀行が触手を伸ばしている。狙いは不良債権にあえぐ銀行業界だという。今年7月、ギリシャの政府債務危機を受けて、欧州銀行監督機構がEU域内の90行に対し健全性テストを実施。なかでも資本不足が目立っていたのがスペインの銀行で、不合格8行のうち5行が同国の銀行という結果だった。その背景には、過去約10年にわたり地中海のリゾート開発など商業用不動産への融資に傾注、これがリーマンショック前後からブームの終焉で焦げついてしまったという事情がある。建設・不動産向け融資の不良債権比率は、じつに2割弱にまで上昇した。

そこでスペイン政府と中央銀行は2009年以降、信用力の低下した銀行に対する資本増強と合併による経営効率化を図り、これまで業界再編を推し進めてきた。とりわけ厳しい地方銀行でいえば、その数は45行から18行へと約3分の1に集約されている。

企業合併のアドバイザーを務める投資銀行からしてみれば、こうした状況はまさに絶好の収益機会。調査会社のディール・ロジックによれば、投資銀行に収益をもたらすスペインの金融機関のM&A(国内同士の合併またはスペイン側が国外に買収される案件)件数は、08年の65件から10年には137件とほぼ倍増。案件総額も66億ドルから343億ドルと5倍以上に拡大しており、規模の大きな銀行にまで再編が波及していることがうかがえる。

これを受けて欧米の投資銀行が同国への人員シフトを図っているほか、日本勢では野村ホールディングスが投資銀行部門の人員を、旧リーマン・ブラザーズを承継した直後の10人体制から急拡大、いまや50人にまで増員して案件獲得に奔走。あるスペイン駐在の投資銀行担当者も「仕事がかなり増えている」と明かす。

さらにここにきて、EU域内の銀行は7月時点よりもさらに厳しい健全性テストの実施によって資本増強を迫られる見込みで、「再編がまだまだ進む」(野村関係者)と見ているわけだ。もっとも、投資銀行に落ちる手数料ベースで見れば、総額は08年の7500万ドルから10年は6700万ドルへと1割減(ディール・ロジック調べ)。案件数は倍増だから、1件当たりの手数料は115万ドルから49万ドルへと4割に減少しているのが実情なのだ。

それもそのはず。競争激化によって「シェア獲得のために採算度外視で引き受けている」(投資銀行関係者)からで、真の目論見は未上場の地銀同士の合併案件を手がけ、「最終的に上場させて儲ける」(欧州投資銀行幹部)ことだ。だが、このところの市況を鑑みれば、“取らぬ狸の皮算用”ともなりかねない。

欧州債務危機が大恐慌引き起こす恐れ=ソロス氏

著名投資家のジョージ・ソロス氏は、ユーロ圏首脳が欧州の債務危機解決に向けて「欧州財務省」の創設を含む抜本的な措置を講じない限り、債務危機が大恐慌を引き起こす恐れがあると警告した。

ソロス氏は、ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックスとロイター・ドットコムに寄稿し、政策当局者はギリシャ、ポルトガル、そしておそらくアイルランドがデフォルト(債務不履行)に陥り、ユーロ圏離脱に追い込まれる可能性に備えなければならないと指摘。「たとえ破滅を回避できたとしても、赤字削減の必要性がユーロ圏を長期的なリセッション(景気後退)に導くことは間違いない。それは計り知れない政治的結末をもたらすだろう」と述べた。ソロス氏はそのうえで、1)弱小国家の銀行破たんを防ぐため、銀行預金を保護する必要がある、2)デフォルトした国の経済を支えるため、一部の銀行の機能を維持する必要がある、3)欧州の銀行システムの資本再編を実施し、国家でなく「欧州」の監督下に置く、4)赤字を抱えた他の国の政府債を保護する必要がある──とする4つの大胆な政策措置を提言。「それらはすべてコストがかかるが、課税権限を持ち、借り入れもできる『欧州財務省』を創設する以外に選択肢はない」と述べた。20110915

経済
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